依頼をこなしたり、呪い関連の場所を巡ったりと忙しい夫婦に違いない。
[2012年 6月 24日]
「メイサ、危ない」
「え!?」
驚くメイサの声がするけど、俺はもうそれどころじゃなくて。
慌てて細い腰を抱き寄せてその場から飛び退る。とほぼ同時に、いた場所が爆発した。
や、やばかった…あのまま立ってたら相当ダメージくったぞ。
「す、すみませんさん」
「俺のことはいいから、集中して。メイサのことは俺が守るから」
「うう、頑張ります」
現在、俺とメイサはとある依頼を遂行しているところ。
すったもんだあって、いまでは俺はメイサの仕事を手伝うのが主になってる。
呪術に関してはまだ勉強途中でわからないことも多いけど。
念を習得してるおかげで、肉体労働や危険を回避することには向いている。
だから術を使うメイサを守る、ってのが俺の仕事みたいなものになっていた。
今回は特に高い集中力が求められるみたいで、メイサの額に汗が滲んでる。
俺にしてやれることは、その集中を乱さないようにしてやることだけ。
って、また足元が不自然に光った!
メイサの身体を抱き上げて飛んだり、もう面倒になって下半身を堅でなく硬で守って凌いだり。
冷や汗をかきながらもなんとか踏ん張って、メイサの術が完成するのを待つ。
そうなったらあとはもう問題なく。いつもの通り、依頼を終えることができた。
かなり大がかりな術だったのか、メイサがその場にへたり込んでしまう。
「大丈夫か?」
「なんとか…。すみませんさん、迷惑かけっぱなしで」
「迷惑だなんて思ってない。メイサに怪我がなければそれでいいんだ」
「…!!」
「怪我、してないよな?」
「だ、だだだだだ大丈夫です!ほら元気元気!」
「立ち上がれないみたいだけど」
「うっ」
実際怪我はないんだろうけど、力を使い切った感じかな?
このままへたり込んでるわけにもいかないし、と俺はメイサを抱き上げた。
「!?」
「依頼成功を報告しないといけないし、このまま行く」
「え、ちょ、待って下さい!私自分で歩けますって!」
「あんまり遅いとよくない。大人しくしてて」
何しろ今回の依頼、古書店の店長の仲介だからなー。
遅くなると色々言われるだろうから、さっさと帰って報告しないと。
まだ何やら抵抗してるメイサは気にしないことにして、俺はそのまま駆け出す。
瞬きを止めながらだから、かなりのスピードになる。
そうやって到着した店では、店長がちょっとだけ目を見開いて迎えてくれた。
すぐに呆れた顔になったけど。
「…ここはイチャつく場所じゃねえ」
「ち、違いますってば!!」
「店長、依頼成功しました」
「そうか。にーちゃんがいりゃ問題ないとは思ったが…おいメイサ」
「………何ですか」
「その情けない恰好はなんだ。旦那に頼りきりで鈍ったんじゃないだろうな」
「いえ店長、俺が勝手にやったことで」
「………顔に似合わず、甘いヤツだな」
溜め息と共に店長が吐いた言葉に、なんでか腕の中のメイサもしみじみ頷く。
え、甘いってなんで。だって心配ならこれぐらいするんじゃ?
「まあいい。報酬は振り込んでおく」
「ありがとうございます」
「バカップルはさっさと帰れ。んで、飯食って寝ろ」
「………あ、そういえば今日の夕飯はメイサが当番だったっけ」
「?そうですね」
「その状態じゃ辛いだろ。俺が作ろうか」
「だ、駄目ですってば!そこまで甘やかさないで下さい!」
えー。仕事で疲れてる女の子に無理させるようなひどい男じゃないよ俺。
わたわたと慌てるメイサは作る気満々みたいで、店長もやらせとけと投げやりだ。
…まあ、やりたいならいいけど。喜んで食べさせてもらうけど。
手伝えるように、傍で待機はさせてもらおう。
依頼をこなしたり、呪い関連の場所を巡ったりと忙しい夫婦に違いない。
[2012年 6月 24日]