未来図を思い描いて、主人公はしみじみ羨ましがっているに違いない。
[2012年 6月 24日]
おかしいだろ!?キルアまだ子供なんですけど!!
れっきとした男っていう問題もあるけど、キルア未成年!KO・DO・MO!!
それで新婚生活ってコンセプトはおかしすぎるだろ、モラル的な意味でも問題だよ!!
………と俺が抗議したところで管理人は流しまくるわけで。
まあ、いいけどさ。俺とキルアが二人暮らし、ってのは天空闘技場でもあったし。
普通に同居と考えればいいんだろ。はあ、妙な企画タイトルにするのやめてくれよなー。
とりあえず、そろそろキルアを起こすか。下手するといつまでも寝るからな。
「キルア、入るぞ」
一応ノックしてみるものの返事はない。
ドアを開けて寝室に入るとキルアの姿が………ない。あれ?
もう起きてるのか?と思ったけど、リビングとかにはいなかったし。トイレでも行ったのかな。
そう考えつつ、隣の俺の寝室を覗いてみる。………と、ベッドにふくらみが。
「………キルア、また侵入したな」
まったく、だいぶ大きくなったってのに俺の寝床に入ってくるの好きだな。
ゾルディック家で溺愛されて育ったせいか、甘えん坊なところは変わらない。
俺が起きたときはいなかったと思うんだけど…寝ぼけてこっちに来たのかな。
それはいいとして、とりあえずキルアを起こさないと。
声をかけてみるけど反応なし。仕方ないからベッドに腰を下ろして揺すってみる。
「んー……」
「そろそろ起きろ、昼になるぞ」
眉間に皺が寄ってキルアが唸った。
こうやって寝てると、初めて会った頃と変わらない可愛い寝顔。
柔らかい銀髪をわしわしと撫でると、気持ちよさそうにすり寄って来た。もうこれ、猫だ。
甘やかしてやりたい気はするんだけど、規則正しい生活は大事。
子供のうちから自堕落な生活を送っちゃいけない、うん。
また布団をかぶりそうなキルアの手をつかんで、どうしたもんかと悩む。
…布団ひっぺがすか?力だけだとキルアの方が強そうだけど、ううーん。
耳元で大きな声出してみるとか。気配に聡いはずなのに、なんで熟睡してんだか。
「キルア、起きろ。キルア」
「………うー、ん…?」
「………………。……………チョコロボくんもう買ってやらないからな」
「それはヤダ!!」
かっと目を見開いたキルアに、俺はもう呆れるしかない。
おいおいキルアくん。ちみはもう自分でチョコロボくんぐらい買えるんじゃないかね?
いつまでも俺にねだるその癖をなんとかしたまえ。子供扱いするな、って拗ねるぐらいなら。
「………?」
「おはよう、ねぼすけ」
耳元から顔を離してキルアを見下ろすと、よくわからんがキルアがいきなり顔を赤くした。
え、風邪?と慌てて俺のおでことキルアのおでこをくっつける。うーん…大丈夫そう、かな。
つかんだままのキルアの手も微妙に熱い気がするけど、子供って眠いときは体温上がるし。
咳とかくしゃみする様子もないから、多分平気なんだろう。よし。
「起きる時間はとっくに過ぎてるぞ」
「わ、悪かったよ」
ばつが悪そうに目を逸らすキルア。うん、まあ反省してるならよしとしようか。
俺はキルアの腕を解放してベッドから腰を上げた。
「食事の準備はできてるから、着替えて来い」
「…へいへーい」
ちゃんとベッドから抜け出すのを確認して、俺は台所に戻る。
スープを温め直しておかないと。
………マジでびびった。
耳元で声がしたかと思えば、目を開けた瞬間に飛び込んできた焦げ茶の瞳。
ものすごく近くにある顔に慌てる。知らないうちに、腕までつかまれてたから余計に。
が本気で俺を抑え込もうとしたら多分勝てない。
実力の差ってのもあるし、俺は俺で本気で抵抗できないから。
心臓がうるさく音を立ててるのがわかって、顔が赤くなる。
それがわかってて、は俺の反応を楽しむみたいにさらに顔を近づけてきた。
けど、ぶつかったのは額と額。緊張よりも安心を与えるそれに、なんかもう。
…結局、こいつの中で俺って子供のままなのかなって複雑になる。
もちろん、一人前として扱ってくれることは増えた。
俺の意思を尊重してくれるし、あまり干渉してくることはない。
だけど、ふとしたときに感じる接し方はまるで。子供をあやすような、感じで。
「ま、俺は俺でそれを武器にしてきたしな…」
「何か言ったか?」
「べーつに。、今日の予定は?」
「ない。買い出しにでも行こうかと思ってたけど」
「買い出しねぇ」
「キルアも予定がないなら来い。また背が伸びたから、新しい服とか靴も揃えよう」
ほら、こういうところがさ。
が俺を子ども扱いして世話を焼くとき、俺だけを見ててくれる。
だから俺はいつも子供の振りで甘えたり拗ねたりしちゃうんだ。複雑だと思ってるのに。
こいつの傍に無条件にいられるなら、それでもいいかと。そんな打算がある。
「………」
「?何だよ」
「…いや」
じーっと俺の方を見てるに首を傾げると、一瞬躊躇って。
「キルアも、そのうち大きくなるんだろうな」
「は?」
「シルバさんは大きいし、イルミも長身だろう。キキョウさんも背は高い方だから」
「あー、まあ」
「俺の身長も、追い抜かされるかもしれないな」
俺がの背よりも高くなる。そんなの、まだ全然想像もつかない。
は身長が高い方ではある。兄貴と並ぶと…まあ兄貴の方がでかいか?って感じ。
でも女装もできるぐらいだから、高すぎるってこともないんだけど。
…そうか、俺が背を追い抜く可能性もあるんだよな。うわ、すげえ楽しみ。
を見下ろすってどんな気分だろ。
「しかもきっと、すごい美形に成長する」
「え」
「イルミは…真顔すぎるが、一応美青年だろ」
「…能面だけどな」
「シルバさんも、すごく男らしくて格好良い」
「まあ、親父は確かに」
「ミルキも痩せてれば美形の部類だと思う」
「ええ!?あのミルキが!?」
「パーツだけだと、イルミやキキョウさんに近いぞ」
想像してみるものの、痩せてるミルキ自体が浮かばない。
ちょっと歩くだけで汗をかくようなヤツの、どこをどう見たら美形になるんだか。
呆れながらジュースに口をつけると、なんかしみじみが俺を眺めて頷いた。
「…キルアは、文句なしの美形になるだろうな」
「ぶっ!!」
「?どうした」
「…げっほ、ごっほ…!い、いきなり何を…言うかと思えば!」
「思ったままを言っただけだ」
しれっと返されるけど、俺はもう動揺して上手く口が回らない。
こいつ、そんな風に俺のことを見たりしてたのか。
絶対に格好良くなるよ、とかすかに笑う瞳に嘘はない。
………もし、いつか。
俺の身長がよりも高くなって、想像した通りに美形ってヤツに成長したら。
そうしたら。
もう、子供扱いはしないでくれるんだろうか。
未来図を思い描いて、主人公はしみじみ羨ましがっているに違いない。
[2012年 6月 24日]