そういうときに限って、変態とか旅団とかに遭遇するにチョコロボくん一個。
[2012年 6月 24日]
「おはよう、イリカ」
「あ、おはようございますさん」
朝、起きてくればできてるご飯。笑顔で振り返ってくれる可愛い奥さん。
………そうそう、これだよこれ、新婚生活ってこれだよ…!!うっ、涙出そう。
「どうかされました?」
心配そうに近くまで来て俺を見上げてくるイリカ。
天空闘技場のお膝元にあるケーキ屋さんで、いまも働いてる女の子だ。
俺みたいなのにも笑顔を向けてくれて、すごく自然に気配りしてくれる。
こんな良い子をお嫁さんにもらえるって幸せすぎるだろ、俺。
「なんでもないよ」
幸せすぎて泣きそうになったんだ、とイリカのおでこに俺の額をあてる。
あ、そうだ。やらなきゃいけないことがあったんだっけ、と俺はオーラを解放する。
そのままイリカの身体をオーラで包み込んで、腕の石が赤から青になるまで続ける。
よし、これでいいかな。一日三回、できるだけやるようにしてる作業だ。
イリカはちょっと特殊な身体をしていて、ひとより細胞分裂が速い。
そのおかげで怪我とかもすぐに治る回復力を持ってるんだけど。
逆に言えば、老化も早い可能性があるってことで。
だから傍にいられるときは、イリカの時間をちょっとだけ巻き戻してる。
…といっても、人間に対してはあんまり効果がないから、焼石に水なんだろうけど。
でも、何かせずにはいられなくて。
「今日は仕事は何時から?」
「九時に着ければ、なんとか」
「…じゃああと三十分ぐらいか。送るから」
「さんも仕事あるのに」
「通り道だし、心配しないで。店長がいれば安心だけど、そこまでの道をひとりにさせるのは俺が不安なんだ。安心させると思って、頼む」
特殊なイリカの身体を狙っている者もいたりする。
だから彼女には専用の護衛もちゃんとついてるんだけど、最近ではそれも減ってる。
どうやら俺のことを信頼してくれてるかららしい。責任重大すぎてちょっと怖い。
でも俺としてもイリカに何かあるのは嫌だから、送り迎えはしっかりするつもりだ。
食事を終えた後は準備して、そのまま二人で家を出る。
通い慣れた道を歩きながらイリカがそういえばと顔を上げた。
「今度、キルアくんがケーキの作り方を教わりに来たいって言ってましたよ」
「キルアが?」
「食べさせてあげたいひとがいるって」
「あぁ…多分、妹かな」
「妹さんがいるんですか?」
「妹というのか弟というのか…うん、すごく可愛い子がいる。キルアも可愛いけど」
「ふふ、それ言ったら怒られそうです」
なんてことを話しながらだと、あっという間にケーキ屋の前。
ちょうど店長が店のドアを開けたところで、おはようと笑顔を見せてくれた。
「二人とも、今日も元気だね」
「はい」
「くんはこれから仕事?」
「はい、閉店時間をちょっと過ぎちゃうかもしれませんけど」
「うん、わかった。じゃあ待つ間、イリカは新しい料理覚える?」
「え、いいんですか?」
「簡単なヤツだからすぐ覚えられるよ。くん、楽しみにしておいて」
「はい。イリカ、また後で」
「はい、いってらっしゃい!」
イリカの笑顔に見送られて、仕事に出発。
仕事を終えて顔を出すと、いつも何かしら店長はケーキを用意しててくれるし。
申し訳ないけど、すごくすごく嬉しい。
店長のケーキも、イリカが頑張って覚えてくれた料理も美味しくて。
どんな仕事も乗り切れる気がする、と拳を握った。
そういうときに限って、変態とか旅団とかに遭遇するにチョコロボくん一個。
[2012年 6月 24日]