「いらっしゃいませ」

お客様へのいつもの挨拶で出迎えたのはきれいな纏をした20代ぐらいの男の人。

「当店にお越しいただきありがとうございます。」

この人、この店が裏で開いてる念が掛かった道具見に来たんだよね?
ここの店に来る人で念を覚えてる人は大体が裏に用事がある人だし・・・
と思いながら、お客さんの目を見たとき、この人の目につい吸い込まれてしまった。
どこにでも居そうな茶色の目。
澱んでるように見えるけど、どこか澄んでるような不思議な目。
何とも言いようのない怖さがあるけど、暖かい目のような気もして・・・・・


私の親は一般人で、小さな街で小さな雑貨屋を営んでいて、
裏のことなんて何にも知らない人たちだった。
ただ、私の作った道具には不思議な力が宿ることは分かってたみたいで、
よく私が作った物を売ってたりしてた。
けど、私が10歳のときにそれを狙ってやってきた強盗に殺された。
そのとき私はジンさんに助けてもらったんだけど・・・
それから、店を開くと決めたとき、
私は念能力を使って、空間を作り、店の裏側を作ることにした。
それは、私が空間を操作したり具現化したりすることが出来る特質系だったから、
誰が襲ってきても、撃退できるようにするために。
他の能力として除念で、副業もしてるから余計に・・・

この店の空間に来れるのは私の許可した人と、強い念能力者だけ。
私が創った空間では、私の存在や意志が絶対的な権限をもつ。私の思いのままの空間。
でもお客さんはなんの戸惑いもなく、私の作った空間に入っていった・・・・
普通の念能力者は空間があることすら分からなかったり、
入ることに警戒して私に品物を持って来させる人が多いんだけど・・・

「これは警戒したほうがいいよなぁ・・・」





「これいくら?」

意外にも彼が手に取った物は「聞いた人が幸せになる」っていう念を掛けて作った
オルゴールだった。
この店は表では普通の雑貨屋として開いてる。
でも、この店の裏側には私が作った念の掛かった道具が売ってある。
神字を使ったものだったり、付属の能力を付けた物だったり、
雑貨のような小物から物騒な武器まで、なんでも置いてるけど。

「4425ジェニーになります。」
「お探しになっている物をおっしゃってもらえば品物を集めてきますが?
 いかがいたしましょうか?」
「お願いします。女の子が喜びそうなもので。」

普通はこんな事言い出したりしないけど、
この人はなんだか特別に案内しようという気になった。不思議だなぁ。
こちらから言い出したことなのに、きちんと礼をしながら、頼んでくれるなんて。
ホントは優しい人なのかもしれない。


ここで、私の説明をいれようと思う。
私、前世の記憶がはっきりある。しかもその前世では、この世界の事が
漫画やアニメで描かれてた。だからって原作に関わろうとかそんなことは全く思わないんだけど・・・。
それに死んだのが15歳の頃でこっちに転生?してから18年たって、実はこっちの世界の方が生きてる時間は長いんだよね。
私の念はさっき書いた通り、「空間」に関連した能力。
知ってる人は某漫画の結界術を思い浮かべてもらえると良い。
その空間でなら、私が読もうと思えば、人の思考や記憶を読んだり、
素養がある人になら、テレパシーのように考えを伝えることもできる。

彼が空間に入ってきて少ししてから、
不意に彼の記憶が私の中に流れてきた。

とっても驚いたけど、彼が「前世の世界」に生きていた人かもしれない
という可能性が私の頭によぎった。


「こちらになりますが、どうでしょうか?」

彼に頼まれた、女の子に人気の品物を机に並べた。
色んな説明をしながら、私は聞きたいことがたくさんあった。

結局彼は最初のオルゴールを選んだ。
プレゼント用に包装して、手渡すときに思い切って聞いてみた。

「ぁっあの!変なこと聞くかもしれないんですけど、
 お客さん、別の世界のこと知っていらっしゃいますか?
 平和な日本という国がある世界を・・・」
「!・・・・・。なんで?」
「あっ!すいません。変なこと聞きました。忘れてください!ホントすいません!!」
「・・・・・・そんなに謝らないで。なんでそう思ったの?」

怒らせたと思った。けど、きっと彼なら聞いてくれる。
何の根拠もなかったけど、そう思った。


「そうか・・・」

大変だったねっと頭を撫でられて、私はボロボロと涙が溢れてきてしまった。
わたしも自分の自覚のないところで、寂しいと思ってたのかもしれない。
それに信じてもらえるなんて思わなくて。
彼の優しい声と暖かい手に、つい感情を抑えられなくなって・・・

「これって同郷ってことでいいのかな?俺 って言うんだ。
 名前教えてもらえる?」
「っはい!私、前世では神西 真祐(じんさい まひろ)、
 今世では、ユイ=ロックベルって言います!」


これがさんと私の出会いだった。



サイト三周年のお祝いに、とまたも素敵なお嬢さんとのコラボが届きました。
イノリさん、本当にありがとうございます…!!やったね、日本を知ってるひとゲットだよ!

………しかしこの男、どこを歩いていても女性を引っかけてくるとはどういうことだ。

[2014年 4月 1日]