この場にキルアがいたら全力で主人公に甘え妨害工作をしはじめそう。
[2012年 2月 29日]
「………あ」
「?どうした」
何十キロもあるチョッキやら腕輪やらしながら薪割りを頑張るレオリオ。
俺の唐突な声に斧を振り下ろしてから顔をこっちに向けた。
いまでは日常生活はあんな重いものつけてても問題ない。
レオリオはもちろん、クラピカとかゴンもすっかり普通にこなしてるもんなー。
やっぱり漫画の主人公たちって成長のスピードが尋常じゃない。
なんでもない、と手を振ってから俺は木の幹に寄りかかったまま携帯を取り出した。
いまここはククルーマウンテンのふもと。ゾルディック家の敷地内。
ハンター試験が終わって、ここへ連れ戻されたキルアをゴンたちは迎えに来たところだ。
なんか色々バタバタしてて忘れてたけど、俺メイサにお礼してないじゃん。
メイサからもらった首飾りのおかげで三次試験通過できたのに、すっかり忘れてた。
呪術師である彼女は多忙らしくて、基本的に電話は繋がらない。
メールで送るのが一番確実だろう、とアドレスを呼び出す。
えーとなんて打てばいいかな。
『前にもらった首飾りのおかげで、すごく助かりましたありがとう。今度お礼させて下さい』
っと、これでいいか。
呪いの石版探しに役立つかも、ってことで呪術について教えてくれたりもする女の子。
ちょっと慌てんぼうなところがあるけど、あれは愛嬌のうちだよなうん。
すごく素直で良い子だ。…呪術師っていう職業は怖いっちゃ怖いけど。
あ、返事もうきた。
ちょうど休憩時間とかだったんだろうか。
『お役に立てたなら何よりです。お礼は嬉しいのですが、お気持ちだけで充分です。ありがとうございます』
おお、なんて控え目な子なんだ。
俺の周りの人間だったら、そう?じゃあ好きな食べ物おごって!ってのがデフォだ。
シャルとかな、キルアとかな。クロロにいたっては何を要求してくるかわかったもんじゃない。
フィンクスたちにかかれば手合せしろとか言い出すだろうし。
こういう女の子らしい文章に癒されるー。
ネオンとかにお礼したいって言ってみろ。………コレクションの仲間入りだ。
でもお礼しないってのはな、俺としては申し訳ない。
だけどこう言ってくれてるのを無理やり押し通すのもお礼の意味がないし。
…今度会ったときにでも、何かできたらいいな。どっかで食事して奢るとかでもいい。
とりあえず『うん、ありがとう』と感謝だけを送信。
何がいいかなー、メイサって甘いもの平気だったっけ?
って、あれ、またメール。
『さん、体に異変はありませんか?呪いは無効化されても安全とはいえないので、不調を感じたなら言って下さいね』
わあ、心配してくれてる!すごい嬉しいぞ!
こんな風に心配してもらえるって、幸せなことだよなー。
呪いの影響とかは受けてないから大丈夫って返信しておこう。
「お前がそんなに携帯いじってんの珍しいな」
「…そうか?」
「相手は?女か?」
「………よくわかったな」
「このレオリオ様をなめてもらっちゃ困るぜ」
出来上がった薪の束を抱えて歩き出すレオリオに俺もついてく。
ここで作業の手伝いをすると修行にならない、って怒られるんだよなー。
小屋に戻ると、ゴンとクラピカが洗濯物を取り込んできたところに遭遇。
「……そうだ、二人に聞きたいんだが」
「?なぁに」
「ひとに贈り物をするとき、どんなものが喜ばれると思う」
「どんなもの…対象によるんじゃないのか」
「女だ女。さっきまでメールしてた子にだろ?」
「…まあ。ちょっと世話になったから」
あんまり重たく思われてもなー、でもちゃんと感謝は示したいし。
なぜか沈黙してしまったクラピカの隣で、ゴンが眩しい笑顔を見せてくれた。
「やっぱり手作りじゃないかな。心がこもってる感じがするし!」
「手作り…」
編み物とかできるわけじゃないし、木材加工とかもできない。
アクセサリーとか作れたらいいんだけどなー、ビーズとかシルバーとか。
俺ができる手作りっていったら…料理ぐらい。
「………料理は、ありだと思うか」
「!?」
「いいと思うよ。の料理すっごくおいしいってキルア言ってたもん」
「…ありがとう」
「ま、待て。女性相手にいきなり手料理を振る舞うというのは」
「意外に点数高いかもしんねぇぜ?なるほど、そうやって色んな女を…」
「お前の下劣な品性と同じにするなレオリオ」
「おいクラピカよ。お前の俺に対する認識について物申したいんだが!」
あ、クラピカとレオリオの喧嘩が始まった。
でも確かに料理ってのはいきなりは構えさせちゃうかなぁ。
………ひと口で食べられるようなお菓子とか?
せっかくの機会だし、お世話になった人達に配ってみようかな。
そう思って手作りチョコを作ってみた俺だったわけだけど。
逆に色んなひとから贈り物をもらって、驚くことになるのはまだ先の話。
この場にキルアがいたら全力で主人公に甘え妨害工作をしはじめそう。
[2012年 2月 29日]