おまけ

「メイサ、夕飯食べてく?」
「えっ」

俺にチョコのお礼とお菓子を持ってきてくれたメイサ。
やたらとキルアがメイサと話をしたがって会わせてみたら、そのままこんな時間。
この後仕事とかあったら申し訳ないけど、そうでないなら食事ぐらい振る舞いたい。
キルアの相手して疲れてるだろうし。

「予定がないなら、食べてって」
「でもご迷惑じゃ」

遠慮深くていい子だよなー、こういう女の子らしい反応にすっごく癒される。
迷惑なら声かけないから、と言い添えてもう一度食事に誘う。
キルアが妙に懐いてるんだよなー、さっきから何の話してんだろ。
どうも俺の名前が出てるみたいだから、俺のこと聞いたり話したりしてんだろうけど。
………まさか俺の恥ずかしいことバラしてんじゃないだろうな。

戸惑いながらも頷いてくれたメイサに感謝して、じゃあ待っててとお茶だけ出す。
ぱっと作れるものだと何かなー、食材どんだけ残ってたっけ。

「なーなー、俺甘いもん食いたい」
「デザートは食後。まずはちゃんと飯」
「えー」
「食後はメイサのお菓子をもらおう」
「あ、そういやそれがあったっけ」
「た、大したものじゃないですからね!」

いやいや、女の子がくれたお菓子ってだけで俺には幸せの味だよ。
冷蔵庫の中身をしゃがんで確認する俺に、キルアが遠慮なくのしかかってくる。
お、重い、キルアくん肩が重いです。

「そうだメイサ。あのもうひとつの袋の中身はストラップ?」
「あ、はい」

お礼のプレゼントがストラップ、っていうのもいいよな。
高すぎると相手に気を遣わせるし、かといって安っぽいのも困る。
メイサが用意してくれたストラップは三色の石が埋まったお洒落なもの。
………実はすごい高価だったりしたらどうしよう。

「石を押すと、赤が麻酔薬、青が催眠薬、緑が催涙薬が噴射されるそうです」
「……………へー」

………………全然普通のストラップじゃなかった。
って、ちょ、ええ!?何それ護身用ってこと!?
催涙薬はまだ分かるけど、催眠薬に…麻酔薬ってどういうこと!どこで使うの!?

「ちなみに麻酔薬は熊でも効くそうで。痛みは感じるとか」
「…つまり、身体は動かなくなるけど感覚は残ると」
「はい。麻酔と催眠は持続時間が三時間、催涙は三十分は目を開けてられないそうです」
「……なるほど」

あ、でもこれヒソカとかに遭遇したとき使えるんじゃね?
あの男にこういう薬が効くかは激しく疑問だけど、逃げる時間を稼ぐとかはできそう。

それにしてもこんなものを購入できる環境にいるメイサって…。
この世界じゃこういった護身道具が普通ということなんだろうか。やだそんなの。
…やっぱりメイサも危険な仕事してるからなのかな。
呪術師って、詳しい仕事内容は知らないけど、やっぱり危ないこともあるんだろうし。

「ありがとう、使わせてもらう」
「すみません、妙なもので」
「いや、多分すごく役に立つと思う」

俺の周り、危ないヤツ多いから。
哀しい現実を受け止めながら、俺は人参やら玉ねぎやら野菜を手に立ち上がる。
肩に乗ってたキルアに降りるよう促し、俺の携帯を持ってきてもらう。
不思議そうにしながらもキルアは机に放置してた携帯をちゃんと持ってきてくれた。

「ストラップ、つけといて」
「んー」
「え、あのさん」
「使える場所につけとかないと、意味がないから」

できるなら、これを使うことなんてない方がいいんだけど。
多分それは無理な話で。

メイサの心遣いに感謝して、俺は包丁を取り出した。
とりあえずは夕飯を作ろう。和食はあんま食べたことない、ってメイサ言ってたよな。
ジャポン料理は食べたことあるんだろうけど、日本の家庭料理はまた別だ。
久々に煮物とかチャレンジしてみっかなー。こっちの世界にも調味料ちゃんとあるんだよね。
キルアご所望の肉もあることだし。

食事が終わった後は、皆でお菓子を食べよう。
ちょっと物騒な、でも頼りになりそうなストラップがついた携帯を眺めて。





主人公と知り合いの女の子に興味津々なキルア。
亜柳さん、本当にいつも素敵なお話をありがとうございます!
少しでも感謝の気持ちをお伝えできたら嬉しいですー!!

[2012年 3月 31日]