おまけ

メイサと親しくなったのは、呪いの石版探しがきっかけ。
もともと同じ本屋を利用してたわけだけど、そこのユリエフ店長が紹介してくれたのがメイサ。
呪い関連を調べるならもってこい、ってことで出会ったのが最初だった。

そうして時間が経って、一緒に遺跡を巡ったり、メイサの家にお邪魔したり。
あとそうそう、念を教えたりしたこともあったっけ。

明るくて、だけど仕事になるとけっこう厳しい顔を見せる女の子。
でもやっぱり基本的にはおっちょこちょいのほっとけない子って感じで。
最初はどっちかっていうと、妹とかネオンを相手にしてるときと同じ感覚だった。
だからけっこう構えずに自然と過ごせて、それが気楽で。

もっと一緒にいる時間が増えたとき。
俺にとってものすごく近い場所にメイサがいる、って気づいた。

とにかくトラブルに巻き込まれるメイサは危なっかしい。
いつもハラハラさせられるけど、笑顔を見ると心があったかくなって。
ずっと笑っていてほしい、なんて思うようになったのはいつからだっただろう。

元の世界には帰りたい。そのためには呪いの石版を探さないといけない。
だからメイサと一緒に行動する時間がとれる言い訳になって。
……でも、もし石版が見つかったら、俺はあるべき場所に帰らないといけない。
そうしたら、二度とメイサには会えなくなる…多分。

それは嫌だな、なんて。我儘なことを考えて。
でも俺なんかが一緒にいたいと思っても、メイサの方はどうだろう。
呪術師っていう特殊で危険な仕事をしてる彼女は、忙しそうに飛び回ってる。
俺も色々と勉強はしてるけど、結局は一般人に毛が生えた程度の知識だ。
下手をすると足手まといにもなりかねない。
それはメイサをより危険にさらすんじゃないだろうか、って思ってた。

メイサが、俺のことを好きだって言ってくれるまでは。

いつものごとくトラブルに巻き込まれ、必死こいてなんとかチンピラを追い払った俺に。
メイサが投げかけた問い。その質問の意味がすぐには理解できなくて。
彼女が流した涙の理由も、伝えたかったであろう言葉も。俺は気づけなかった。

なんだ、同じだったんじゃないか。
俺が勇気を出せなかっただけで。

メイサが一生懸命に踏み出してくれた一歩。俺が踏み出せなかった一歩。
泣きながら差し出してくれた気持ちに、俺もありったけの想いをこめて応えたい。

なあ、メイサ。

俺、この世界で生きていってもいいかな?

メイサの大事な一生を、俺のためにもらってもいいのかな?




「………メイサ」
「はい?」
「…俺、もしかしたらメイサに辛い思いをさせるかもしれない。多分、苦労もさせる」

手を繋いで歩く、夕暮れの街。
向かう先は、メイサの家だ。遠くない未来、俺たちの家になるかもしれない場所。
それとも、別に新居でもつくろうか?それぐらいのお金なら、ありがたいことに持ってるし。
だけど、ハンター世界っていう危険な環境で、俺はどのぐらい順応できるだろうか。

「けど、メイサのことは幸せにしたい」
「………さんが一緒にいてくれれば、その、………幸せ、です」

真っ赤な顔で俯く恋人………そう、恋人に胸がいっぱいになる。
俺にこんなに可愛い恋人ができるなんて、思わなかった。夢なんじゃないかってほど。

「そうだ、このままユリエフ店長のところに行こうか」
「え?」
「メイサをもらいます、って挨拶を」
「ななななななな何言ってるんですか!なんで店長にそんな挨拶を!?」
「え、だってメイサにとっては大事なひとだし…保護者みたいなものだろ?」

結婚はいずれするんだから、そこらへんきっちりしとくべきなんじゃ。
と思ったんだけど、いいんです!とぶんぶん首を振ったメイサが俺の手を引っ張った。
そのまま走り出すもんだから、俺も引きずられていく。

まあ、いいか。

だってメイサと生きていくのなら、俺はこの世界にずっといることになる。

だったら、時間はいくらでもあるんだ。






………これ全部本気で口にしてるんだから性質悪いですね(砂糖ザー)

[2012年 10月 7日]