って本当に甘いもの好きだよねー」
「…なんだいきなり」

シャルのマンションにて、寛いでた俺は雑誌から顔を上げた。
テレビを眺めていたシャルは画面を指さす。どうやらケーキ特集のようだ。
うわ、うまそう。今季注目のスイーツだって。

「シャルも、甘いもの好きだろう」
「まあね。けど、俺はみたいにケーキ屋通うほどじゃないし」

えー、けど俺と甘いもの巡りとかよくするじゃん。
土産にケーキもってくと目を輝かせることを俺は知ってるぞ。

「あ、クロロも好きだけど」
「…らしいな。本人あれで隠してるつもりらしいが」
「俺たち団員にはバレバレだけどねー。他人相手には見栄張りたいみたい」
「甘いものが好きで困ることもないだろうに」
「クロロが目指すのはミステリアスな男だから」

いや、十分ミステリアスだろあの外見。俺、あんな恰好絶対できない。

「クロロのことはどうでもいいや」
「………」

ひどい言われ様だな。
前々から思ってたけど、旅団メンバーでけっこう素でひどいよな、クロロに。
団長という立場はあっても、やっぱり対等な位置に近いんだろう。
言いたいことを言える、ある意味で家族のような関係にも思えるんだ。
近すぎず、遠すぎず。でも信頼できる存在。

って他に好物あるの?あ、ジャポンの料理が好きなんだっけ」
「…あぁ。でも、基本的に何でも食べる」

じーちゃんに色々と過酷な食事をさせられてきたからな。
おかげで相当なゲテモノでもない限り食べられるようになってしまった。
普通の料理、ってだけでありがたく心底おいしく食べられる。

「強いて言うなら、手料理が一番好きかな」
「手料理かぁ…。他人が作ったものって、怖くない?」
「…そうか?あったかくていいと思うけど」
「そこは俺にはよくわからないや」

えー。

「………俺の料理は食べるじゃないか」
「そりゃの作ったものなら。あ、なるほどね、そういうことか」

ひとり妙に納得してるシャルに首を傾げてしまう。
まあ、流星街で育ったシャルからすると、仲間以外を信用はできないんだろうけど。
俺の作ったものを食べてくれる、っていうことは信頼されてるわけで。
それはちょっと嬉しいかな、と思う。

「シャル」
「ん?」
「…たまには、シャルが作ったものを食べてみたい」
「え、俺?」

目を丸くするシャルに、素直に頷いておく。
だってさ、俺だって友達の作った料理食わせてもらったっていいじゃんか。
ひとのために作るのも好きだけど、俺のために作ってくれた料理を食べるのも好きなんだ。

少しだけ唸ったシャルは、ろくにしたことないよ?と困ったように笑う。
簡単なものでいいよ、と返して楽しみだと続けてみる。
弱ったなぁと髪をかきながらも、シャルは本当に嫌がってるわけではないらしい。
なんだかんだ優しいよなー。シャルの手料理、楽しみにしてよっと。

そんで、意外というかある意味で予想通りだったというか。
器用においしい料理を作ってみせたシャルに、俺はびっくりすることになる。

俺はが作ってくれたものの方がおいしいや。
そんな風に言ってくれるシャルに、嬉しいやら照れくさいやら。
お互い様だ、と返して。




ほのぼーの。

[2012年 1月 3日]