「ボクの好物はね、おいしく実った果実なんだ」
「………青い果実じゃなかったのか」
「それが育つのを待って、食べるのが好きなダケ」

いいいいいやあああああああ、ピエロの顔が近づいてくるうううううう!!!

「君はもう、おいしく実ってるよネ。そろそろ食べさせてよ」
「……お前にやるものはないと毎回言ってるだろう」
「んー、つれないなぁ。これだけ良いオーラしてるくせに」
「お前がそうさせてるんだ」
「それはゾクゾクするね」

するな!!
怯えたオーラ見て興奮するとかどんだけサドなんだよお前!!

えー皆さん、俺はいま変態奇術師に捕獲されているところであります。
………………そう、捕獲されてしまいました。両腕押さえつけられております。
おかげでいま身動き取れないよ、目の前に怖いひとがいるよ、息かかってるよ。
もうこのまま気絶したい勢いなんだけどそうしたら殺されるかもだからできない。

誰か助けてー!!イルミでもいいからー!!

「ボクが目の前にいるのに、他のこと考えるなんてひどいじゃないか」

他のことでも考えてないと発狂しそうなんだよ!!
って、ちょ、こら、顎をつかむな。そして顔を近づけてくるなマジで!!
頭突きとかしていい?したら殺される?でもこのままでも死ぬ気がするんだけど!?

「今日はいっぱい楽しませてもらうよ」
「………付き合ってられるか。離してくれ」
「ダメだよ。そんなことしたら君は逃げるじゃないか」
「当たり前だ」

逃げるに決まってんだろうが。むしろ逃げない人間がいるとでも思うのか。

「ククク、この日を待ってたよ。あぁ、どうやって楽しもうかな」
「………………」

グッバイ、俺の人生。
走馬灯のように過去が巡るのかと思いきや、脳裏に浮かんだのはじーちゃんの顔。
………いや待て、いますっげー馬鹿にした笑いでピースしてたぞあのじじい。
くっそ、俺より長生きしてピンピンしてるなんて腹立ってきた。
元の世界に戻ったら絶対にあの頭部の生き残りを毟ってやる。

ふつふつと怒りの湧いてきた俺は、勇気もみなぎってきた。
眼前に迫るヒソカもいまなら怖くない。じーちゃんに殴りに行くためならば。

というわけで、強引に反動をつけてむしろヒソカがいる方向に起き上がる。
ただでさえ息がかかりそうな距離だったから、一瞬ヒソカと顔がぶつかった。
珍しく驚いたのかヒソカの拘束がわずかに緩む。よっしゃ!
するりと腕を抜くことに成功し、そのまま今度は俺がヒソカを押し倒した。
あとはもう前転に近い感じでヒソカの上からどいて駆け出す。

なんでだかよくわからんが、ヒソカは俺の後を追ってこなかった。




顔のどの部分がぶつかったのか、よく考えてみよう。

[2012年 1月 3日]