「あーあ、トンパじゃなくてだったらこの試験楽勝だったのになー」
「…確かにそうだが、もしもの話をしても仕方がないだろう」

時計にあるスイッチでマルかバツかを選んで押す。
多数決で決まるこの道は、今度は下へ続く階段を開いた。
五人で進む道ってのはいいんだけどさー、なんでトンパなんだよ。
ゴンが一緒の道なのは楽しそう。クラ…ピカ?とリオレオもいいとして。

………最後のひとりが、だったらな。
そう思ってボヤくと、意外にもクラピカが同意してきた。
そういえばこいつもと知り合いなんだっけ。実力も知ってるらしい。

ってすごいよね!あっさりと隠し扉見つけちゃうんだもん」
「あー、あれは俺もびびった」

隣を歩いてたゴンが目をめちゃくちゃ輝かせる。

トリックタワーについた俺たちは、下へ降りる手段を探してて。
側面をつたっていくのはナシだけど、ぱっと見た感じ下に行けそうな方法はない。
どうしたもんかとゴンと話してたら、あいつの声が俺を呼んだ。
もう反射みたいな感じで振り返れば、が足元にある扉に吸い込まれていくところで。

手を挙げて、あいつは先に下へ行ってしまった。

………ちぇ、さっさとひとりだけ行くなんてずりーの。
しかもちょっと笑ってたよな、あいつ。こんなん楽勝ってことか?
あーもー、腹立つ!俺だって絶対に下に辿り着いてやるんだからな。

は遺跡をよく巡っているようだし、こうしたトラップの類は得意なのかもしれない」
「へえ、そうなんだ」
「私も遺跡の場所を知らないかと尋ねられた」
「あぁ、一緒に旅行したとか言ってたな」
「旅行…というほどのものではないが。道案内しただけだ」
「俺まだちゃんとと話したことないから、ゆっくり話してみたいな」
「…そうかぁ?俺は御免だぜ」

リオレオがしっぶーい顔して唸る。
どうして?とゴンが聞くと、ああいう手合いは苦手だと一言。
ま、俺はそれで全然かまわないけど。が他の連中と親しげにしてんのは面白くない。

俺はまだまだあいつには届かなくて。
それを知ってるから、あいつはいつも俺を待っててくれる。手を伸ばしてくれる。
昔はそのことが嬉しかったけど、いまはちょっと複雑。
俺は手を引いてほしいわけじゃなくて、あいつと対等でありたい。
同じ目線で、同じものを見られるようになりたいんだ。いつまでも子ども扱いは、されたくない。

必ず追いついてみせるから。
いまは無理でも、その背中を追い越してみせる。

そのための一歩を、俺はまた踏んだ。




違うよキルア、挨拶したんじゃないよ声かけようとして落ちたんだよ。

[2012年 2月 2日]