イルミが断ろうとも、ヒソカは単独でお礼と称して迫るに違いない。
[2012年 2月 14日]
「ばれんたいん?何それ」
「………知らないと思った。とりあえず、普段世話になってる礼と思ってくれればいい」
直接確認したい仕事の話があって、久しぶりにのところに来たら。
よくわからないけど、小さなチョコを渡された。毒、入ってたりするのかなこれ。
ま、俺には毒なんて効かないからそんな意味のないことしないか。
袋を開けてみると、どこからどう見ても売り物じゃない出来のチョコ。
「…これ」
「チョコ作るなんて初めてで勝手がよくわからなかったんだ」
「が作ったの?へえ」
とりあえず一個放り込んでみる。
うん、市販のものと違うからちょっと硬い。
「チョコだね」
「それ以外の何かだったら俺が驚く」
俺としては、がこんなもの作ってくる方が驚きなんだけど。
世話になってる、とか言ってたけど。そんなのギブアンドテイクだから。
仕事はお互いにメリットになるから組んでるだけで、世話してるつもりはない。
…あぁ、でも運び屋を斡旋したのは俺だから、そういうこと?
むしろ俺としては世話になってるのはこっち。
キルが家を出てからも監視をせずにいられてるのはが一緒にいるから。
とりあえずが一緒なら、キルに危険が及ぶことはそうないだろうし。
「ボクとしては、チョコよりもが欲しいなぁ」
あ、やっと来た。
との打ち合わせとは別口で仕事の依頼があったから、待ち合わせ場所同じにしたんだよね。
「や」といつも通りの笑顔と変な声で現れたヒソカに「遅刻だよ」と一言。
ごめんごめん、とか謝ってるけど誠意が感じられない。感じられたらむしろ気持ち悪いけど。
そういえばってヒソカのこと嫌ってたっけ、といま思い出した。
振り返れば、いつの間にかものすごい距離をとってヒソカを睨みつけてる。
「…お前にやるものはない。いつも言ってるだろ」
「その冷たい物言いがまたいいねぇ。じゃあボクにもくれよ、チョコ」
「だからお前にやるものはない」
「酷いなぁ。じゃあイルミ、それ一個ちょうだい」
「え。高いよ」
「うん、言い値でイイヨ」
「わかった。後で振り込んでおいてね」
チョコを一個ヒソカに譲りながら、いくらにしようかなと算段。
俺が殺し以外の依頼を受けるのって、ヒソカぐらいなんだよね。
ヒソカは俺を何でも屋と思ってるところがある気がする。
…ま、俺もヒソカの力を利用させてもらうこともあるから、いいんだけど。
「うーん、甘い。じゃあ、チョコはボクが買ってくるからさ」
「いらない、買わなくていい、むしろ俺に近づくな」
「買ったチョコと一緒に、キミを食べていいかな?」
「いいわけがないだろう。チョコだけ食べてろ」
ヒソカの性癖ってホント気色悪いし面倒臭いよね。
も心底嫌そうに眉間に皺寄せてるし。
そんな顔もゾクゾクするね、とか言い出したヒソカをどうしよう。
仕事の依頼があるって言ってたけど、俺もう帰っていいのかなこれ。
なんでか家族全員分を用意してたらしいに、俺は段ボールみたいなの渡されたよ。
家族どころか執事たちの分もあるらしい。といっても、カナリアとかゴトーたちのだけ。
他の執事の分も、なんてなったらいくつあっても足りないし。
………よくこれだけ作ったよね。
「」
「…なんだ?」
気が付けばヒソカのバンジーガムと攻防を始めてる。
ねえヒソカ、本当に依頼いいの?俺帰るよ?
「お礼とか、欲しい?このチョコの」
「………食べ物以外で頼む」
「食べ物以外…うん、考えておく」
「………………無理しなくてもいいから。俺からのお礼なのに、さらにお返しはおかしいだろ」
「うん、じゃあ何か思いついたらお礼するよ」
「イルミ、お礼にボクをにあげるっていうのはどうだい?」
「うん、黙らないと針山にするよヒソカ」
イルミが断ろうとも、ヒソカは単独でお礼と称して迫るに違いない。
[2012年 2月 14日]