ヒソカから命からがら逃げ延びた俺。
………マジでお返しいらないんだけど。ってかヒソカにチョコあげてないだろ俺!
勝手に食べて勝手にお返ししようとするとか、どんだけポジティブなんだよあいつ。
あー、気持ち悪かった怖かった死ぬかと思った。

でもここでへばってたらお礼を配り終えられない。
気を取り直して、お世話になった人達のところに顔を出していく。
そうしたら、自然と気持ちは落ち着いてきた。
ケーキ屋さんは忙しいだろうから、お礼しに行くなら明日かなー。
皆すごく驚いてたけど、でも笑顔で受け取ってくれるから嬉しい。
周りに巻き込まれていつも必死だけど、やっぱり俺は皆が大好きで。

この世界に来なければよかった、なんて。
そんなことは実は思ったことはないんだ。

もちろん元の世界に帰りたい。それはいまも同じ気持ち。
だけど、ここでの出会いもどれも大切なものばかりで、忘れたくないと思う。
沢山の優しさに助けられて、俺はいまを生きてる。
………優しさじゃなくて殺気とか向けてくるヤツもいるけど、それはスルーの方向で。
このチョコで、少しでも感謝を伝えられるといいな。

「ほら、さっさと寄越すもん寄越しな」

………………………。
腰に手をあてて仁王立ちのマチさんが、手をひらひらと振っております。

「…シャルから聞いたのか?」
「そう。シャルが男連中にチョコ配り始めるから、何の罰ゲームかと思った」
「………悪いことしたな」
「いいんじゃないの。気持ち悪そうにしてる連中見て、楽しそうにしてたし」
「…あぁ、そう」
「ほら、さっさと出しな」

あ、はい、渡させていただきます……。

「手作りなんだって?」
「そう。といっても出来上がりはあまり期待しないでほしい」
「ふーん」
「シズクたちもいるか?」
「いるよ。カルトが妙にそわそわしてた」
「あぁ…甘いもの好きだからな」

キルアほどでないにしても、カルトもけっこう食べるんだよな。
喜んでもらえるといいんだけど、と女性陣用の紙袋を取り出す。
ちょっとだけ可愛くラッピングしてみたんだ。喜んでもらえるといいなと。

!」
「ちょうどよかったカルト。いまチョコを…」
「僕もにチョコあげようと思って。はい」
「え、俺に?」
「うん。あとこれは兄様に」
「わかった、渡しておく」

カルトはキルア大好きだよなー、よしよしちゃんと渡しておくからな。
俺の腰になんでだかしがみついたままのカルトの頭を撫でる。

……で、カルトさん。君は結局、男の子なのかな?女の子なのかな?




カルトの作ったチョコは天才的な硬さを誇ります。

[2012年 2月 14日]