外でのんびり過ごすのも飽きてきた頃。
他の受験生たちがバタバタと動きだした。皆元気ダネ。
どうやらこの船を動かそうとしてるらしいけど、ウン頑張ってもらおう。

これからどうしようかと考えてると、ちょうどが外に出てきた。
あれ、てっきり皆を手伝うんだとばかり思ってたよ。

は混ざらないの?」
「…お前達を見張るよう言われた」

すごく億劫そうなところが彼らしいよね。
まあ、ボクやイルミを見張れるような人間、彼以外にいないだろうから。
指示を出した人間は適確な判断をしたわけだ。ボクとしても好都合。

「じゃあ暇なんだ。トランプタワーを作るの手伝ってよ」
「この風の中?すぐ崩れるだろ」
「またあの嵐来るんでしょ。いつ?」
「…あと十時間ぐらいらしいけど。あくまで予想だ、もっと早い可能性もある」
「ふーん」

それまでに船を動かさないといけないってことかい?
なるほど、それで皆元気に動き回ってるわけだ。

「暇だし、ダーツとかやる?」
「的がないじゃない」
「ヒソカのトランプを的にして」
「ひどいなぁ。イイケド」
「………俺、ダーツのルール知らないが」

へえ、意外だね。そういう遊びは覚えてそうなイメージなのに。
ああでも、は無駄な遊びとか嫌いそうでもある。
クックック、何も知らない彼に教えられるって、すごく楽しいね。

「そ。じゃあ教えるよ」
「ボクも教えてあげるよ、手取り足取り」
「断る」

同じことを思ったのかイルミも動き出した。彼が絡むとイルミも反応が珍しいよねぇ。
顔から抜いた針を手渡すイルミに、ボクもうかうかしてられない。
投げ方を教えるために腕をとりつつ後ろに回った。あ、良いねこのアングル。
腰つきとか、けっこうボクの好み。筋肉のつき具合がいいよねぇ、太すぎず細すぎず。

「………俺の背後に立つな」

一気に殺気が膨らんだかと思うと距離を取られちゃった。
やっぱり後ろに立たれるのは嫌か。ま、当然といえば当然の反応。
背後ってのは無防備だからね、戦う者からすると一番警戒する部分。
あぁ、やっぱり彼の殺気は良い。この禍々しいオーラが、すごく気持ち良い。
それにあの焦げ茶の瞳。澄んでるように思える色が濁る瞬間が、ぞくぞくする。
このままヤるのもありかな、と思ったんだけど。

「ほら、あそこにトランプ置いたから。まずは好きなの狙ってみなよ」

絶妙なタイミングでイルミが声をかけてきた。
おや、気が付けばトランプが的になる準備を整えてるじゃないか。

まだ怒りが収まらないのか、のオーラはざわざわとしたまま。
でもとりあえずダーツもどきをする気はあるのか、針を構えた。
彼ならすぐ習得しちゃいそうだけど、まずは一回投げるのを見て様子見。
……と思ったら、彼の投げた針はボクの眉間を狙ってきた。

「嫌だなぁ、ボクとそんなに遊びたいのかい?」

本気じゃない速さだっていうのはわかるケド。
彼がこうして挑発してくるのはすごく珍しい。いつもは無関心な態度だから。
良いなぁ、もしかして遊んでくれる気分なの?

「………俺はトランプを狙っただけだ」
「あぁ、ヒソカってジョーカーそっくりだしね」
「いいよ、的になってあげようか」

そのまま遊ぼうよ、きっと楽しい時間になる。

「いらん」
「ヒソカ気持ち悪い」
「二人して冷たいなぁ」

でもやっぱり素っ気ないところは変わらなくて。
この殺気だけでも気持ち良いから、いまは満足しておこうかな。

ああ、いつか本気でやり合える日が本当に楽しみだよ。





ヒソカさん気持ち悪いです。

[2012年 5月 29日]