………はて?なぜ俺は縁側に正座しているのだろう。

ゾルディック家を訪れ、キルアとちょっと話して。
そんでミルキにつれられてキキョウさんとお茶会をして。
昨晩はミルキの部屋に泊まってゲームをクリアし。
そして現在。

ゼノさんの個人的な趣味の建物だという日本家屋にて。
緑茶を手に和んでいるところであります。

「おお、ここの和菓子をおぬしも知っておったか」
「はい。この店は餡子が他所とまったく違うので感動しました」
「それがわかるとは、なかなかじゃわい。シルバは甘いものをあまり好まんでの」
「親父ほど頻繁に食べる気にはなれんだけだ。嫌いではない」
「キキョウさんはどちらかというとケーキの類ばかり。年寄にはキツイわい」

どうやら息子夫婦があんまり和菓子に付き合ってくれないことが不満らしい。
でもこうしてシルバさんもどかりと胡坐をかいて一緒にお茶してるんだから、いい息子だ。
いいよなー、今日は天気もいいし、あ…鳥の鳴き声がする。
……なんか聞いたことない鳴き声だけど、ハンター世界じゃこんなの日常茶飯事だ。
あれ、なんて鳥なのかなぁ。ククルーマウンテンに生息する特殊な種類なのかも。

「イルミやキルアが世話になっているな」
「いえ、どちらも俺が特別何かする必要のあるわけでも」
「昨日はミルキに付き合っておったようじゃの。あれは頭は良いが馬鹿なのが残念じゃ。他の家族も扱いに困っておるのに、お前さんは物好きらしいのう」
「………そうですか?」

そりゃ引き籠りの扱いってのは家族の悩みの種だろうけど。
ここまで言われるミルキってなんだかな、と目が遠くを見つめてしまう。

「俺は兄弟がいなかったので、ここに来るのが楽しいと思えることもあります」
「ほう?ククルーマウンテンの怪物が住む場所にか」
「もちろん怖いですし、俺ごときが近づいていい場所でもないんですが。キルアたちと過ごす時間は、それ以上に特別です」

それにシルバさんやゼノさんって、こうやって過ごしてると安心するんだよな。
でっかいお父さんと、ちょっとお茶目で優しいおじいさん。
……いいな、俺こういうおじいちゃん欲しかったよ。あんな特殊なじーちゃんいらねえよ。
いや、じーちゃんのことは好きだけど。でも素直にそう言うには腹立たしいっていうか…!

「お前さんの物好きさに、うちの者も影響されるのかもしれんの」
「え?」
「…そうだな。キルアはともかく、あのイルミやミルキまでもが懐いている」
「………イルミのはちょっと違うんじゃ」
「ほれ、もうひとり来おったわい」
「?」

ゼノさんが笑いながら庭の方を指さす。
俺がそっちを見ると、振袖を揺らしてカルトが庭に下り立ったのが見えた。

!」
「あぁ、カルト。久しぶり」
、お母様とミルキお兄様とケーキ食べたって本当?僕だけ仲間外れなんてずるい」
「ちゃんとカルトの分も取っておいてるよ、確か。そうだ、おはぎ食べるか?緑茶によく合う」
「カルト、たまにはキキョウさんだけでなくわしの話相手もしとくれ」
「そうだな、たまにはいいだろう」

カルトはいっつもキキョウさんと一緒にいるもんなー。
おいでおいでと手招くと、素直に縁側までやって来た。着物と風景がよくマッチしてる。
きょろきょろとシルバさんやゼノさんを眺めて、カルトはくるりと方向転換。

……なんでか俺の膝の上にちょこんと乗ってきた。

「…カルト?」
「やはり、孫たちはお前さんがお気に入りのようじゃ」
「まあお前から学ぶことも多いだろう。子供たちを頼む」

いや、あの、俺が教えられるのなんて些細な…というか一般的な知識ばっかりで。
ゾルディックの方々からしたら貴重なのかもしれないけども、それでも。

恐れ多いというか、純粋に怖いというか。

はあ、と溜め息をついてカルトの頭の上に顎をぽんと置く。
ちらりと見上げてくる綺麗な目に、俺は苦笑を返しておはぎを差し出した。
あーんと口を開ける甘えん坊のカルトが可愛くて。
仕方ないなぁ、と口の中に小さく切ったおはぎを入れてやる。

おお、このメンバーだとなんかすごい癒しスペースになるぞ。





理不尽な長男とか、色々とアレな母親とか、そもそもひととしてダメな次男がいないおかげ。

[2012年 10月 8日]