友達とやらが、会いに来ている。
会いたいか?という俺の問いに、キルははっきりと頷いた。
だから俺は、この家を出て外の世界へ向かうことを許した。

キルアがあんなにたくさん笑うのを見たのは、どのぐらいぶりか。
最近では家族といてもあまり笑わない。キキョウやイルミがいるときは常に不機嫌顔。
もうそんな年になったか、と俺は息子の成長を感じていたところだが。
キキョウは可愛い息子に邪険にされ、ヒステリックに叫ぶことが増えたのはいただけない。

友達。

家出の間にできたという存在を語るキルアの目は、きらきらと輝いていた。
最初は俺に話すことを躊躇っていたようだが、緊張が解けたらあとは立て板に水。
楽しかった思い出を話したくて仕方ない、といった顔はまだまだあどけないもの。
成長しているが、子供のままでもある。
様々なものを感じていく年頃のキルは、狭い場所に閉じこもっているのはつまらんだろう。

だいたい、ゾルディックの血を色濃く継いだキルアは器が違う。
守られているだけの弱い存在じゃない。もうそんな時期は過ぎた。
これからは、広い世界を見て色々な経験をしていくべきと俺は思う。

だがまあ、キキョウの親としての心配もわからんでもない。

「あなた!!キルを行かせてしまって本当にいいの!?」
「黙ってろと言ったはずだ。それに、心配はない」
「心配ないですって!?キルはいまが大事な時期だっていうのに…!」
「それも聞き飽きた。大丈夫だ、が付いてるんだろ」
「………それは……そうですけれど」

の名を出すとキキョウも大人しくなるな。まあ、当然か。
キルアが小さい頃の師匠であり、イルミの仕事仲間。家族ぐるみでの付き合いの男。
ここゾルディックでも平然として過ごすことのできる、なかなか面白いヤツだ。
そういえば親父が手合せしてみたいと言っていたな。それは俺も同意見だ。

だがあいつの仕事は運び屋。戦うことに重きは置いていない。
迅速に確実に荷物を運ぶ、それが目的だ。だから基本的に戦いは好まない。
ハンター試験のときは、珍しくイルミと戦いたがってたらしいが。
「惜しいことしちゃった」とイルミが残念がっていた。
確かに滅多にない機会だったろうな。

「お父様」
「どうしたカルト。寂しいか」
「………」

無言で俯くカルトの頭を撫でてやれば、膝に乗ってくる。
キルアがまた家を出ることになる上に、もすぐに出て行ったからな。
よく懐いてるカルトからすれば寂しいだろう。

「キルがお世話になるんだもの、さんには何かお贈りするべきかしら」
「ああ、イルミとミルキも世話になっているしな」
「何がいいかしら。カルトちゃん、一緒に選んでくれる?」
「はい、お母様」
「キルの写真を送ってもらえるよう頼んでみましょうね」

さっきまで発狂せんばかりだったのに、うきうきと贈り物を選びはじめる。
女ってのはどうしてこう感情がころころ変化するんだか。

しかしか。いったいどんなものを好むんだろうな。





甘いものください。

[2012年 11月 30日]