「寒い」
「………寒そうだな、確かに」

仕事で荷物を届けた俺は、サインを書きに来たクラピカをじっと眺める。
厚着してはいるんだけど身体が震えてる。
細いヤツって寒さがより骨身にしみるらしいからなー。

「風邪引くなよ」
「…お前こそ、年中外にいる仕事なのだから気をつけろ」
「あぁ、そこは気をつける。クラピカこれ」
「?」

ポケットに入れてたカイロを差し出す。
まだ開けてそんなに時間経ってないから、数時間はもつと思う。
いいのか?と心配そうに見上げてくる瞳に頷いた。ふふん、実はさらに二個あるのだ。
残りの二個は背中とお腹に貼るタイプだから、手元にはないけど。

「…指先冷たいな、お前」
の手は温かいな」
「カイロ触ってたからな」

氷みたいなクラピカの手をぎゅっとカイロごと握る。
あんまり外気に触れさせるのもよくないから、早く部屋に戻れよと手を離した。
少し名残惜しそうにしながらもクラピカは頷いて荷物を手にとる。

「…そうだ、ボスが会いたいと言っていたが」
「うん、それはまたいつか」
「と、言うと思ったからお前が来ることは言っていない」
「……助かる」

ネオンは可愛いんだけどなー、趣味がなー。
ちゃんと配慮してくれるクラピカに感謝して、じゃと俺は邸を後にした。
このままここに留まってると、ネオンがいつ通りかかるかわかりゃしない。
手を振って背中を向けた俺はすぐさま走り出した。

そんな俺の背中を見送りながら、クラピカが大事そうにカイロを両手で包んだことも知らず。





乙女やん。

[2012年 12月 29日]