「仕事できないってどういうこと?」

今日は電気椅子の日で、兄貴の指導を受けながら俺は耐久時間を延ばす訓練。
このぐらいの電流ならもう問題ないな、と感じる痛みを隅に押しやる。
そうしてると兄貴の携帯にメールがきたらしくて、それを見た兄貴がすぐに電話をかけ始めた。
仕事に関わる話で、この砕けた話し方ってことは…か?

じっと聞き耳を立てていると、兄貴が目を瞬いた。
家族だからわかる、これは驚いてるときに顔。家族の俺たちでも滅多に見れない顔だ。

「ふーん。わかった、じゃあ今回はいいよ。また仕事できるようになったら連絡して。じゃ」

携帯を切った兄貴を見上げる。
あいつに何かあったんだろうか、と視線で問いかけると兄貴が口を開いた。

、いま入院してるらしいよ」
「入院!?」
「仕事で盗賊団のアジトに侵入したとかで、戦闘になって猛毒受けたらしい」
「仕事って…あいつ運び屋なんだろ?」
「運び先が危険なところなんてのはよくあるし」

けどあいつがたかが盗賊団相手にやられるなんて信じられない。
だってすっげー強いのに。俺の目標のひとりなのに、そんな。
………なんか腹立ってきた。どこのどいつだよを病院送りにするなんて。
俺が殺してやろうか、と指先が変形していく。

「…兄貴、その盗賊団って?」
「クート盗賊団」
「………………は?」
「クート盗賊団。最近すごいニュースになってたとこ、随分と危ない橋渡るよね、あいつ」

いや、危ないっつーか無謀っつーか。
俺ですら知ってる有名な盗賊団じゃんか。親父たちも面倒な集団が出来た、とか言ってた。
そんな盗賊団が集結するアジトに侵入するか、ふつー?

入院とはいえ、生きて戻ってきたんだからすごい。

「なあイルミ」
「見舞いはダメ」
「なんで!」
「キルはまだ半人前だから。外にそうほいほい出せないよ」

天空闘技場が特殊だったんだ、と真っ黒な瞳が俺を見据える。
この目に見詰められると、強く抵抗はできなくて。俺は唇を噛んだ。

なんだよ、俺のいないとこで怪我なんてしてんじゃねーよ。

次に会ったときに覚えてろよな、




きっとこの後、電話をかけるキルアくん。

[2011年 7月 4日]