、まだー?」
「もう煮えてるはずだ。ちゃんと野菜も食べろよ」
「へーい」

鍋をつっつくキルアはまず肉をとる。…うん、まあわかってたけどな!
ゴンはきちんと野菜を器にとっていて、よしよし偉いぞと頭を撫でた。

冬といえば鍋!
身体があったまるし、野菜も沢山食べられて身体にいい。
何よりみんなで食事を楽しめる、とっても素晴らしい文化だと俺は思う。
てなわけで、自分の分を確保しつつ新しい野菜と肉も投入。

「あち!」
「キルアは猫舌だな。ほら、よく冷まして食べろ」
「……わかってるよ」

拗ねた顔で水を飲むキルアは、相当に可愛がられてきたんだろう。
キキョウさんとか、ふーふーして食べさせてそうだもんなー。
猫舌は長男長女がなる確率が高いんだけど。
キルアは三男でも溺愛されてるから猫舌になっちゃったのかもしれない。
ゴンはぱくぱくと普通に食べてる。好き嫌いも滅多にしないし、ミトさんの教育が窺える。

「あ、豆腐はめっちゃくちゃ熱くなるから本当に気をつけろよ」
「ふーん」
の故郷の料理なんでしょ?すっごくおいしいね!」
「材料刻んで入れるだけだけどな。多い人数で食べると楽しい料理だ」
「ひとりで食っても別にいいんじゃねーの?」
「何言ってるんだ。みんなでひとつの鍋を囲む、っていうのがいいんだよ」

同じ釜のなんとやら、って言うしな。
なんていうかさ、こうやって食事を一緒にしてると距離が縮む感じがする。
炬燵があれば最高なんだけどな、それは今年は調達できなかった。うーん、残念。

「ひとりだと物悲しいし食材余るし、あんまりやらない」
「…じゃあ、前にも誰かとこれやったってことかよ?」
「最後にやったのは……じーちゃんとだな。妙な材料をどんどん入れるから大変だった」

もう何年前になるんだろうなぁ…。海外土産の食材とか叩き込むからマジ焦ったよ。
完全に闇鍋状態になっていたことを思い出し、俺は目頭が熱くなる。
くそ、家庭でしかも祖父と囲んだ鍋がなぜ闇鍋なんだ。同級生とやったんならともかく…!

「じゃあ、俺たちと鍋ができてラッキーだったね」
「ゴン?」
「こうやって三人で食べられて、すっごく楽しいじゃない」
「…まあな」
「次はクラピカとかレオリオも一緒にできたらいいよね」
「そうだな」

朗らかなゴンの言葉に、俺は胸があったかくなる。
なぜか沈痛な表情を浮かべていたキルアも、どこかほっとした表情で。

肉の取り合いが始まったりと騒がしかったけど、だからこそあったかくて。

また誰かと鍋ができる。
それだけで、胸がほっこりした。




…死んだ家族との思い出の料理か、とか思ったに違いないキルアくん。

[2013年 1月1 日]