ドッ、と重い音を立てて白い雪の上にトランプが突き立つ。
かすめただけで風圧を感じるそれは、遊戯の道具なんかじゃなく、立派な凶器だ。
足が雪でとられそうになるのを、オーラを集めることで回避する。
白い息を吐き出した俺は目の前で笑うピエロに顔を引き攣らせた。

なんでだ。
なぜ俺は雪山で、ヒソカと戦闘する羽目になってるんだ…!!

「…お前、寒くないのか」
「ゼンゼン?と出会えて身体が熱くなったぐらいだヨ」
「雪山で寝惚けたこと言うな」
「それに、こうやって身体を動かしていれば自然と熱くなるだろ?」
「こんな熱さはいらないんだ、よっ!」

ヒソカのトランプが俺の頭上の木の枝をかすめた。
枝にぶら下がってたつららが全部落下してきて俺を襲う。
ぎゃああああ、なんてことしてくれんだてめえええええ!!!

両足にオーラをまとって落下地点から飛びのくと、雪がぶわっと舞う。
ぶっふ……!ちょ、オーラ込めすぎたこれ!!雪が粉みたいに舞ってる…!!

ああくそ視界が悪くて全然見えん!!
ヒソカっていう猛獣が近くにいるのに何も見えないのは恐ろしくて仕方ない。
咄嗟に円を展開すると、俺に向かってくるバンジーガムを複数本察知した。
いやあああ、進行方向からも飛んでくるじゃねえかー!!
触っただけでアウトってのが厄介なんだよこれは。
地面に手をついて、そこにオーラをこめる。あんま得意じゃないけど、これで強化はできてるはず。

雪玉をバンジーガムにぶつけて、ほんの少しだけ軌道をずらす。よっし、これで抜けられる!
できた隙間を駆け抜けていった俺は、突然目の前に現れた影にぎょっと目を剥いた。
うお、円を解いちゃってたから気づかなかっ…………って。

「………イルミ、遅刻だ」
「うん、ちょっと手間取っちゃった。いやー、まいったまいった。でも遅刻ってほどじゃないよね」
「遅い。仕事は迅速に」
「俺の仕事は確実性も求められるから。……で?何この騒ぎ」
「やあイルミ。いまボクはと遊んでるところなんだ。キミも混ざるかい?」

これのどこが遊びだ貴様!

「仕事が終わったなら帰るぞイルミ」
「うん」
「本当につれないなぁ。せっかくあったまってきたのに」
「汗が引くとまた冷えるぞ。俺はさっさと暖房のある建物に入りたい」
「飛行船にも暖房はあるよ。乗りなよ、送ってくから」

………え、イルミが優しい。
自家用機に乗せてくれる、という言葉に俺は思わず警戒してしまった。

「………送るって、どこに?」
「俺ん家」

それは送るとは言わないんだぞイルミ!!

「ボクも行ってイイ?」
「いいよ。ちょうど身体動かしたい、って親父たち言ってたし」
「キミのご家族と遊べるのか。それはそれでイイネ」

俺は絶対に加わりたくないなそれ。
カルトとミルキと遊んでよう。うん、それがいいそれが。

………だから、雪山は寒いんだって!!




なんだかんだ、普通に戦えるようになってる主人公です(逃げることに特化してるけどね!)

[2013年 1月1 日]