ギドとの戦いに負けて、全治四か月の怪我を負っちゃった。
ウイングさんに叱られた俺は二か月の修行禁止を言い渡された。
どれだけ心配をかけてしまったのか、ウイングさんの表情と声に胸が痛くなって。
ミトさんが俺を叱ってくれたときのことを思い出した。

自分の好奇心のままに突っ走って、俺を心配してくれるひとを悲しませる。
それはとてもいけないことで。キルアだって、ぷりぷり怒ってたし。

「………ねえ、キルア」
「んー?」
は?」
「なんか買い物行くつってたけど」

ウイングさんと話をしてきたキルアは、「燃」の修行ならしていいって伝言を預かってきた。
二人で目を閉じて自己を見つめる「点」を続けてたんだけど。
そういえばの姿を見ていない、と思い出して尋ねれば買い物。

「キルアは何か聞いた?が今回のことどう思ってるか」
「試合のことか?さあ、いつも通りだったと思うぜ」

は試合を観に来ることはなくて。
治療を受けてる間は処置室に入れもしないし、俺はそのまま寝ちゃって。
目が覚めた今日はキルアとウイングさんの顔しか見てない。
まだとちゃんと顔を合わせてないんだ。怒ってるかな、呆れられただろうか。

ちょっとだけ落ち込んでると、キルアがおでこを突いてきた。

「なんの心配してんだよ。あのだぜ?こんぐらいのこと気にするわけねーだろ」
「…うん。けど俺、ウイングさんの教えを破っちゃったわけだし」
「なら次は守ればいいだろ。一回の失敗でどうこう言うヤツじゃねーよ」
「キルアが言うならそうなんだろうけど…。でも、やっぱり謝りたい」
「謝る?」
「多分、心配かけただろうから。、優しいもん」
「あー………そら、まあな」

なんて話してると、買い物袋を提げてが帰ってくる。
どうやら夕飯用の食材らしくて、俺たちのために作ってくれるみたい。
カルシウム取れそうなメニューにするな、と言ってくれるはやっぱり優しい。

「………、あの」
「ん?」
「……ごめんなさい!!昨日の、その、試合」

まだ身体のあちこちが痛くてベッドから抜け出せないまま。
それでも頭を下げる。
短い沈黙が落ちたかと思うと、袋がテーブルに置かれる音がした。
そして静かに近づいてくる足音の後、ベッドが軋んで誰かが腰かけた振動が伝わる。

次には、頭を撫でられる感触。
恐る恐る顔を上げると、ちょっとだけ困ったような笑顔があって。

「ウイングさんにちゃんと叱られたんだろう?」
「……うん」
「なら次は繰り返さないようにな。痛い思いは一度すれば十分だ」
「…うん」
「けど、俺たちはできることならゴンにもキルアにも痛い思いはしてほしくない。だから忠告するし制限もかける。そのことはわかってほしい」
「………はい」
「それがわかってて言いつけを破りたいときは、それなりの覚悟と責任を持てよ」
「…!そんなこと俺しないよ!」
「どうだかな」

だって心配してくれてる人達の心を悲しませたくない、って思う。
ウイングさんの悲しげな顔とか、キルアの怒った顔とか、の困った顔とか。
全部痛くて、胸が苦しくなったのに。

「お前は意志が強いからな。多分、突っ走る日もあると思うよ」
「…う」
「それをフォローするのがキルアだな」
「……ま、仕方ねーよ。あーあ、なんで初めての友達がこんな面倒なのなんだろ」
「ちょっとキルアどういう意味さ!」
「そのまんまだろ。ったくお守り役はつれーぜ」

キルアだってお子様なところあるくせに!と拳を握ると。
俺の頭を撫でるの手がさらに優しくなった。

「でも、忘れるな。お前の命はお前だけのものじゃない。お前が決めたことで、自分だけじゃなくて誰かが傷つくこともある」
「………うん」
「良い意味でも悪い意味でも素直だからな。そこが俺としては心配だ」

最後までは優しいままで。
逆にそれが俺には辛くて、叱られるよりある意味ダメージがあったかも。

しかも。

「あ、明日から俺ウイングさんとこで修行するから」
「「え!?」」
「夜は帰ってくるけど、昼間は自分たちで面倒見ろよ」

なんて言われてしまって。
あれもしかしてこれがペナルティ?と肩を落とした。





ゴンはひとの優しさを素直に受け入れられる子だと思ってます

[2013年 2月6日]