クラピカという不肖の弟子ができて、ようやく念の方向性も決まった。
……念を得る目的が随分と重苦しいもんだ、っていうのは気がかりだが。
ま、俺にできるのはあいつが道を歩くための方法を教えることだけだな。
随分と頑固で手を焼かせてくれるけどよ。
クラピカは具現化の能力者。
具現化するのに選んだのは鎖。…これまた、って感じだ。
何かを具現化するには、それをリアルにイメージできないとならない。
しかも選んだのが鎖だ。ああいったものを具現化するのは骨が折れる。
まずは鎖がどういうものなのか、見なくても感触や臭い、重さがわかるようにならないと。
そのために大量の鎖を注文したわけだが、こんな山奥までご苦労なこった。
知人の紹介だから、信頼できる運び屋ではあるんだろうが。
「おっと、早いな」
木立を抜けて姿を見せたのは若い男。
鎖が大量に入っているはずの木箱を軽々と抱え上げている。
荷物を確認しながら、なるほど大した男だと感心した。
身にまとうオーラが力強く澱みなく流れている。こりゃ能力者だな。しかも相当な手練れ。
なるほど、こりゃ良い仕事をしてくれそうだ。
木箱を開くと出てくる出てくる、多種多様な鎖の山だ。
こんなもんを注文したことを男は不思議に思ってるらしかった。
「………鎖?」
「俺の出来の悪い弟子がこれをお望みでな」
男が一度瞬いたタイミングで、基礎訓練をしていた馬鹿弟子が戻ってくる。
「………………?」
しかも驚いた顔で男を見てるし、名前らしきものを呼んだ。
なんだ?こいつら知り合いか?
確認してみればハンター試験の同期生って言うじゃないか。
そういや今年は豊作だった、ってネテロ会長が高々と笑ってたな。
なるほど、こんな奴も受験してたんならそりゃレベルの高い試験だったんだろう。
その後のクラピカとこの男のやり取りはなんともいえない空気で。
………つかよ、こいつの前だと大人しくなりすぎだろクラピカ。
俺に対してももうちょっと行儀よくしてもいいんじゃねえのか!
借りてきた猫みてえに大人しくなってんじゃねえよ、おい!
…だったか?
こいつも大概だよな。クラピカに対して甘すぎるだろ。
もう一回様子を見に来るみてえだし。
なら遠慮なく修行に付き合ってもらうとするか。クラピカもあいつとなら素直に修行するだろ。
………俺のこともちゃんと敬えってんだマジで!!!
師匠さん、名前プリーズ(新アニメではミズケンさんというらしいですね!)
[2013年 2月21日]