「マチとパクにはこれ」
「?何だいこれ」
「手作り石鹸。最近ちょっと凝ってて」
「あら素敵ね」

包みを開くとふわりと清涼な香りが鼻をくすぐる。
普段は私たちのホームには近づかないのに珍しい、とマチと驚いたんだけど。
ちょうど二人に渡したいものがあったんだ、と言われて何かと思えば。

「…?こっちとそっち、匂いが違う気がするんだけど」
「うん。使ってる材料が違うから」
「マチの方はすっとした感じの匂いね。頭がすっきりしそう」
「パクは…ちょっと甘い感じの香りだね」
「一応、二人のイメージに近い感じの香りを選んでみた」

けっこう上手くいってよかった、と無表情に語るは心なしか満足げ。
料理や家事をまめにする家庭的な面があることは知っていたけれど。
こういう小物を作ったりして喜んだりもするのね、と新しい発見。なんだか可愛い。

それにしてもわかってるのかしら。
男が女に香りのするものを贈ることの意味。

「私にもマチにも贈るだなんて、浮気性ね」
「はあ?パク、何言ってんだい」
「あらだっての作った香りが、私たちの身体につくのよ?特別な感じがするじゃない」
「!!」

実用性しか考えていなかったらしいマチは、そこでぎょっとしてから顔を真っ赤にさせた。
はといえばぱちくりと目を瞬くのみで。小さく首を傾げた。

「嫌なら使わなくて構わないけど」
「…っ…」
「ふふ、意地悪ね」
「え?」
「マチに追い打ちをかけてどうするの」
「そんなつもりは、なかったんだけど」

頬をかいたは「余計なもの贈ったかな」と呟く。
するとマチがそういうわけじゃないとぶっきら棒に応えて、石鹸を大事そうに抱える。
不機嫌な顔を作ってはいるけど、嫌じゃないのよね。でもなかなか素直になれなくて。
そんなマチに石鹸を受け取らせるんだから、ったら相変わらず上手。

「この石鹸を使うときは、のことを思い出すわね」
「………パク、そういう台詞を簡単に言わないでくれ」
「こんな素敵なものを贈る貴方に言われたくないわ」

ちなみにクロロにも作ってきたみたいで。
それこそとても珍しいことだから、私だけでなくマチも驚いてた。
だってってクロロのことすごく避けてるものね。関わるのを面倒臭がるのに。

「失敗作だから」

捨てるのもったいないし、と真顔で言うに納得。
だけど幻影旅団の団長にそんなことできちゃうなんて、本当に面白い。

私もマチも、思わず吹き出してしまった。



常識人な二人にはいつもお世話になっております。ドキドキさせられるけど!

[2013年 3月14日]