ジンを探して様々な場所を渡り歩いた。
最近ではジンの生まれ故郷に立ち寄り、息子のゴンに会うこともできた。
それでもジン本人を見つけることはいまだ出来ず。

そしてまた、新しいジンの手がかりを得て向かった先にいたのは。
という奇妙な男だった。






「…そりゃ、災難だったな」

ジンと共にあのクート盗賊団を壊滅させたという彼は、無表情にコーラを飲んでいる。
どういう経緯でジンと知り合ったのかを教えてもらっていたのだが、なんとも彼らしい。

「あのひとは周りを巻き込む名人だからな」
「…いい迷惑だ」
「それだけ認められてるってことだろ。俺もさっさと追いつかないと」

本当にあのひとはすごい。
そしてジンに認められたもかなりの腕を持つのだろう。
意識せずともわかる、彼の纏の滑らかさ無駄のなさ。
あまり表情が変わらず、深い色を浮かべる瞳に、常人とは違う道を歩んできたとわかる。

「………カイトもハンターなんだろ?」
「あぁ。ジンを見つけるまでは、一人前と認めてもらえないけどな」
「…あれを追いかけるのは大変そうだ」
「だからこそ面白い。…はハンターではないのか」
「…あぁ」
「受けてみる気は?」

そう尋ねてみると、彼は一瞬沈黙した。

「………興味がないわけじゃない、けど」
「あんたなら問題ないだろ」

それだけの実力はあるはずだ。
けれど彼は迷うような素振りを見せる。
自分には合わない世界なのだと、伏せられた瞳が語っているようで。

だがハンターは何も光の世界の仕事ではない。
立派に裏稼業の人間も取得しているわけで、躊躇う必要はないと思うが。

「…気が向いたら、受ける」
「はは、らしいな」

どうやらマイペースな男らしい。
かといって周囲に我を押し通すようなこともない、居心地の良い空気。
本当に、不思議な男だ。





その後でクート盗賊団のアジトへと案内してもらった。
瓦礫の山と化したそこには、巨大な盗賊団のアジトがあったとは思えない。
相当に暴れたんだなぁ…と思わず呟くと、は小さく頷いた。
無論ジンの力もあるのだろうが、これにこの男も加担したというわけか。

足場の悪い瓦礫の上を、ひょいひょいと移動していく背中。
下手に体重をかければ崩れる危険もあるというのに、彼の足取りは危なげがない。

「あんたももちろん、ジンの連絡先は知らないんだよな?」
「ああ。……俺も?」
「ジンの知り合いはみんなそう言うんだよ。いまどこで何してるかはさっぱりだって」
「…ジンらしい」
「俺もそう思う。やれやれ、次はどこを探したもんかな」
「ご愁傷様」
「ま、気長にやるさ」

さて、今度はどこを探したものか。
今回はたった数時間の差でジンを逃してしまった。
ということは、確実に近づいているということでもある。
に協力してもらうのもいいかもしれない。何より、少し興味があった。

はこれから何か予定はあるのか」
「俺はー…」

その後、の携帯に電話が入り彼は忙しそうで。
今回は諦めるしかないか、と俺は連絡先を渡して去ることにした。

と別れて、しばらく進んでから携帯に着信。
「よろしく」と淡々とした文面に載せられたあいつの連絡先。
おう、と俺も短く返信して携帯を閉じる。

ジンを通して知り合った、不思議な男に笑みを浮かべて。






どうして他者視点だとこうもクールなんだろうか主人公…。

[2011年 7月 26日]