「………何これ」
「一応、礼はしておこうと思って」
ものすごい殺気飛ばしながら言うことでもないよね。
今日は珍しく仕事がなくて家でのんびりしてたんだけど。
がカルトに連れられて来たかと思えば、いま目の前で小さな箱を差し出している。
お礼って何。そんなことされるような覚えないんだけど。
「今更だけど、仕事を紹介してもらったからな」
「……あぁ。本当に今更だね、それ」
「うるさい。……感謝はしてるよ」
俺はが出来ると思ったから指名しただけで。
その後の運び屋としての繁盛ぶりは、自身の力のおかげなのに。
義理堅いなと思うけど。親父たちに言わせると、仕事にはこういうところが大事なんだとか。
取引先ときちんと信頼関係を築いてうんぬん。俺にはよくわからない。
ま、こういうだからキルを預けてもいいと思えるのは確かだけど。
「それでお礼になるかわからないけど」
「何、そんな微妙なもの寄越したわけ」
箱を開けて中身を確認する。…………これは。
「こんなもの寄越して何が狙い?」
「……いや、だからお礼だって」
「それに対してこれは報酬として大きすぎるんじゃない」
「…つまり、喜んでくれたってことか?」
「これもらって喜ばない人間がいたら教えてほしいね。信じられなくて殺しちゃうだろうけど」
「そんなこと言われて教えられるわけないだろう」
箱の中に入ってたのはキルの写真。
小さな頃のものもあるし、割と最近のものもあるみたいだった。
俺の知らない顔もあるのは悔しいけど、見られただけでいまは満足しておこう。
「俺がその写真を渡したこと、キルアには言うなよ」
「うん。持ってることも教えるつもりないし」
「……そうか」
「お礼に仕事タダで受けてあげるよ。誰殺してほしい?」
「お礼にお礼をしてどうすんだよ俺は誰も殺してほしくは…………」
そこでふとが言葉を区切った。
珍しいな、本当に殺してほしい相手でもいるの?ちょっと興味あるんだけど。
「ヒソカなら殺してもいいと思うぞ」
「面倒臭いからやだ」
「…だよな」
げんなりと溜め息を吐いたは、どうやら気付いていたらしい。
「ひどいなぁ、どうせならがその手でボクを殺しに来てくれればいいじゃないか」
「………………」
ヒソカ、最初からいたんだよね。
驚かせたいから黙ってて、とかウインクされて気持ち悪いから無視してたんだけど。
が殺気飛ばしてたのも、最初から気付いてたからなんだろう。
睨み合ってる二人は放っておいて。
この写真、どこに保管しておこうかな。
決死の覚悟でイルミにお礼をしに来たのに、変態を釣り上げました
[2013年 3月14日]