「いつも取り置きしてもらってすみません」
「気にすんな。仕事だ」
この街に来たら必ず訪れる古書店フォレスト。
馴染みの店長が素っ気なく返しながら、呪い関連の本をカウンターに積み上げた。
俺がこういう本を探してることを知ってて。まだ読んでないだろこれ、と渡されたときは驚いた。
っていうか、俺がこの店でどんな本を買っていったかまで覚えてるのがすごい。
「店長」
「何だ」
「いつもお世話になってるので、お礼をしたいんですが」
「…別にいらん」
「言うと思いました」
パッと見は怖いひとなんだけど、すごく世話焼きだ。
でも素直にそれを出すことはしないし認めもしないそうで、シャンキー曰くツンデレ。
そんなユリエフ店長を喜ばせるにはどうしたらいいものか。
「甘いものはあまり好きじゃないんですよね」
「むしろ苦手だ」
「ですよね」
「変な気を回すな。兄ちゃんは、俺に面白いネタでも提供してくれりゃいい」
「…面白いネタ?」
なんだろうか、お笑いとか俺得意じゃないんだけど。
「メイサとはどうしてる?」
「…ここで待ち合わせして食事に行く予定ですけど」
「へえ、そりゃまた」
メイサというのはこの本屋で知り合った呪術師の女の子。
呪い関連の資料を調べてる俺に、色々と情報を提供してくれている。
今日もそのことで会って話す予定。あと、メイサにも何かお礼したいと思ってて。
「こんにちは!あ、さん、お待たせしました」
「こんにちは。じゃあ店長」
「あぁ。さっさと行ってこい」
ひらひらと手を振られて俺はメイサと一緒に店の外に出る。
うーん、お礼したかったなぁ。
「?どうかしたんですか」
「いや…。あ、メイサならわかるかな」
「?」
「店長に何かお礼をしたいと思ってて。そうだ、食事の後でプレゼント選びを手伝ってくれないか」
「私で役に立てるかなぁ…店長ってばあんまり自分のこと話さなくて」
俺よりずっとメイサの方が店長とは付き合いが長い。だからきっと大丈夫。
それに、メイサへのお礼の品も何か買いたいと思ってたところだ。
でも何を買おうかと迷っていたから、一緒に選んでもらおう。
やっぱり本人が欲しいと思うものを贈るのが一番だと思うし。
まずは食事だな、と歩き出す俺にメイサが並ぶ。
食事の後のショッピングで、欲しいものがあったら買うよと声をかけたら物凄く動揺された。
ううーん、女の子を喜ばせるって難しい。
君の受け取り方が難しいんだ
[2013年 3月14日]