「まさかがマチを誘うとはねー」
「あら、お似合いだと思うわよ」
「そうですね、裏社会に生きる恋人っぽくてかっこいいと思います」
「シズクのそれは褒めてるのか?」

先ほど出て行ったとマチで、話題はもちきりだ。
の女性関係はシャルナークもろくに知らないが、不自由はしていないだろう。
ワイングラスをあけて、クロロは出かけていった二人が向かった方向へ視線を向ける。

「あいつはそういう色恋沙汰に興味はなさそうだがな」
「俺たちみたいなのと同じ世界で生きてるんじゃ、そうなっても仕方ないよ」
「シャルナークもそうなの?」
「んー、そりゃ抱いて発散したくなるときはあるけどさ。それってただの本能だろ。恋愛うんぬんはピンとこないね、正直なところ」
「うわ、それって私たちの前で言うことじゃない」
「クロロも色々と遊んでるわよね。シャルと同じ考えかしら?」
「相手も十分に楽しんでいる。それで問題ないだろう」
「だよね。あーでもはその場限りってのも避けてるっぽい」

ふと彼の行動を思い返し、シャルナークは頬杖をついた。

「そうなの?」
「女そのものと関わるの避けてる節があるね。素っ気ないっていうか…ああ、けど例外もいるか」
「例外?」
「ケーキ屋の店員には優しい。花贈ってたし」
「あら素敵」
「ならその女が本命とやらじゃないのか」
「どうかなー、そこは微妙」
「じゃあマチが本命だったり」
「「だとしたら俺は尊敬する」」

二人声を揃え、しかも真顔で発言。
魅力的じゃないマチ、とパクノダが首を傾げてみせるけれど。
いやいやいや、ないないないない、と男性陣は手と首を振る始末だ。

「マチはさ、良いと思うよ?美人だし、裁縫できるし、強いし。信頼できる仲間だけど」
「…仲間にとどめておいた方が賢明だろうな」
「ヒソカが狙ってるみたいですけど」
「あいつはマゾだからだろ。それぐらいでないと無理」
「………しかしあのマチが、には随分としおらしかったな」

ほとんど文句を言うこともなく、割とあっさり同行を承諾していたように思う。

「…もしかして、あのひとが好みのタイプだったりして」
「それじゃヒソカは振られるわけだな」
「むしろ誰もが振ると思うけど。マチがかぁ、パクから見てどう?ありえそう?」
「それはマチにしかわからないわね。けど、嫌いではないんじゃない?嫌だったら誘われても行かないでしょうから」
「もっともだ」
「えー、なんか面白くないなぁ。っていうか俺放置されてるし」
「誘ったのは俺なのにろくに話もできなかったな」
「帰ってきたら、なんかやらせる?」
「せっかくだ、こんな写真じゃなくて生であいつの女装を拝んでやろうじゃないか」

テーブルにいまだ置かれている写真をクロロが指で弾いた。
自分の目の前へとやって来た写真を手にとり、シャルナークはひらひらと振る。
何度見ても違和感がないというか、女にしか見えない。
よく見れば体格とかもろもろ男なんだけど、第一印象は女そのものだ。
髪形のアレンジにしろ化粧にしろ、衣裳のセンスといい上手く化けている。

の女装ねぇ」
「いいじゃない、合いそうな衣裳探してみるわ」
「私も手伝います」

乗り気の女性陣が早速腰を上げて行動を開始。
それを見送り、シャルナークは頬杖をついたまま写真をテーブルに置いた。

「本人に確認してないけど」
「構わんさ」





構います。

[2011年 11月 1日]