友人視点

ポッキーゲームなんてもの、誰が考えたんだ。

そんなものがあることすら、いまのいままですっかり忘れてた。
こりゃ帰ったら妹たちに面白半分にせがまれるな。やべ、買って帰るべきか。
しかし、こんなゲームを覚えられても困る。
俺相手ならいいが、他の男に妹たちがやるようになったら大変だ。

「はい、どーぞ」

甘ったるい声が聞こえてきて現実に引き戻される。
腕に胸を押しつけてくる、一応いまのところの俺の現恋人。
ひと学年上の先輩で、まあ美人だしスタイルも良い。ただ、甘え癖がひどい。
身体の相性は悪くないけど、こういうどこでも甘えられんのは面倒だ。

ポッキーをくわえた唇は形がよく、感触が柔らかいことも知ってる。
…けどさ、こういう頭が春って感じのゲームは好きじゃない。

俺が面倒に思ってるのに気づいてるくせに、さらに顔が近づいてきた。
…はいはい、やるまで諦めないんだろ、わかったよ。
これ以上迫られても鬱陶しいから、差し出された菓子ごとその唇を食べる。
………甘い。もうちょっと苦い味のが好みだ。
妹たちが甘いもの好きだから俺も食うけど、基本的には苦めの味の方がいい。

多分、甘いものは心を解く効果があるから。
身内以外と食べるのは気乗りがしないだけなんだろうが。

そんなことを考えながら舌を絡めてると、俺たちの横を遠慮なく横切る影。
ちらりと確認すれば、涼しい顔で本を手に通過するの姿。
普通なら別の階段使うか、右往左往するかのどっちかだろうに。
動揺もせずに歩いていく姿は清々しい。

ちょっと機嫌がよくなった俺は、センパイとわかれて教室に戻った。
なんかまだ構ってほしそうにしてたが、そんなの知ったことか。
教室に入ると、呆れた顔でが俺を迎える。

「……いいのか、先輩放っておいて」
「リクエストには応えたんだ、十分だろ」

最低と言われる行為をしている自覚はあるから、こいつの睨みも気にとめない。
咎めるような視線は、俺のことを多少なりとも気にしてるからとわかってはいるけど。

あの現場をスルーするんだから。

お前だってけっこうひどいもんだぜ?





そうですね、ひどいチキンです。

[2011年 11月 11日]