そうですね、ひどいチキンです。
[2011年 11月 11日]
ポッキーゲームなんてもの、誰が考えたんだ。
そんなものがあることすら、いまのいままですっかり忘れてた。
こりゃ帰ったら妹たちに面白半分にせがまれるな。やべ、買って帰るべきか。
しかし、こんなゲームを覚えられても困る。
俺相手ならいいが、他の男に妹たちがやるようになったら大変だ。
「はい、どーぞ」
甘ったるい声が聞こえてきて現実に引き戻される。
腕に胸を押しつけてくる、一応いまのところの俺の現恋人。
ひと学年上の先輩で、まあ美人だしスタイルも良い。ただ、甘え癖がひどい。
身体の相性は悪くないけど、こういうどこでも甘えられんのは面倒だ。
ポッキーをくわえた唇は形がよく、感触が柔らかいことも知ってる。
…けどさ、こういう頭が春って感じのゲームは好きじゃない。
俺が面倒に思ってるのに気づいてるくせに、さらに顔が近づいてきた。
…はいはい、やるまで諦めないんだろ、わかったよ。
これ以上迫られても鬱陶しいから、差し出された菓子ごとその唇を食べる。
………甘い。もうちょっと苦い味のが好みだ。
妹たちが甘いもの好きだから俺も食うけど、基本的には苦めの味の方がいい。
多分、甘いものは心を解く効果があるから。
身内以外と食べるのは気乗りがしないだけなんだろうが。
そんなことを考えながら舌を絡めてると、俺たちの横を遠慮なく横切る影。
ちらりと確認すれば、涼しい顔で本を手に通過するの姿。
普通なら別の階段使うか、右往左往するかのどっちかだろうに。
動揺もせずに歩いていく姿は清々しい。
ちょっと機嫌がよくなった俺は、センパイとわかれて教室に戻った。
なんかまだ構ってほしそうにしてたが、そんなの知ったことか。
教室に入ると、呆れた顔でが俺を迎える。
「……いいのか、先輩放っておいて」
「リクエストには応えたんだ、十分だろ」
最低と言われる行為をしている自覚はあるから、こいつの睨みも気にとめない。
咎めるような視線は、俺のことを多少なりとも気にしてるからとわかってはいるけど。
あの現場をスルーするんだから。
お前だってけっこうひどいもんだぜ?
そうですね、ひどいチキンです。
[2011年 11月 11日]