皆さん、どうも。
いつの間にやら=ゾルディックに名前が変わっていたしがない一般人です。
おいこらそこ、逸般人とか言うな。確かに念は習得しちゃったけど周りの化け物と同じにするな!

なんだって化け物一家の一員になんかなってんだよ俺はあああああああ!!!





………さて。現実逃避するのもいい加減疲れてきたので、俺はちらりと横に視線を向ける。
そこには俺の<伴侶>であるイルミが寝ている。それはもう熟睡してる。珍しくいびきかいてるし。
…………めっちゃばっちり目開いてるけどな。かっ開きすぎてるせいで寝てるように見えない。
初めて見たときは、いつまで起きてんだこいつ……って思ったし。
でもイルミがいるところで寝るのも怖くてなんとか耐えてたら、さすがに限界がきて隣に転がったんだよ。そうしたらさ、すーすー寝息聞こえてくるじゃん?飛び起きて二度見したね!やっぱり目はばちっと開いたまんまだったよ!

「……よくこんだけ目開けてて乾燥しないよな」

いつの間にやら夫婦なんてものになっているため、俺とイルミは寝室が一緒だ。
けどこんな歩く殺人兵器が隣にいて安眠できるはずもなく。俺は常にベッドに横になっているだけの状態だったりする。
幸いイルミの起床は早いから、早朝にベッドを抜け出すのを狸寝入りで見送り、朝食までの数時間の間ようやく仮眠するという日々が続いている。あとはちょこちょこ昼寝な。これはキルアの部屋かミルキの部屋でとることが多い。

遺跡巡りや資料をまとめるのにまともな睡眠をとれないことはよくあったけど。
そろそろちゃんとベッドで熟睡できる夜を過ごしたい、というのが俺の切実な願いである。




本日も早朝の三時間だけの睡眠で起きた俺は、ふらふらと廊下を進んでいた。
あー……眠い。頭くらくらする。こんな状態で朝飯入るかな……最近やっと食べる勇気出て来たんだけど、こんな頭回ってないときを狙って毒とか入れられたらどうしよう……。

さん、ご機嫌よ…………ろしくはなさそうですわね。どうなさったの?」
「……おはようございます、キキョウさん」
「もう、義母に対していつまでも他人行儀なのですから」

怪我も治ったキキョウさんはイルミを思わせる整った顔を可愛らしく膨らませた。
俺にとってはゾルディック家っていまだに高く分厚い壁があるんですけどね!!

「それにしても本当に顔色が悪いですわよ」
「ごめん母さん。それ俺のせい」
「イルミの?」

すでに並べられた食事の前でイルミが淡々と手を挙げた。
くるりと振り返った母親に対し、暗殺一家の長男はうんと素直に頷いてみせる。
そして俺の方を見たイルミは手招きして、隣の椅子を引いた。そこに座れってことな、はいはい。
抵抗しても無駄なことは分かってるから仕方なくそちらへ向かう。

「俺のせいで寝不足なんだ。無理させてるから」
「まあ」
「……無理って自覚あるならそろそろゆっくり寝させろよ」
「慣れの問題だから。頑張って」
「おい」

俺がお前に慣れて安眠できるようになるとは思えないんだけど!?

「……毎晩毎晩、俺は気絶するように寝てるんだが?」

限界がきて意識を失うような状態で寝て。そんでもイルミが起き出せば目覚める。
そんで部屋からイルミが出ていってようやく熟睡できるという悲惨さだ畜生…!!
………………。

「キルア。なんでアルカの耳塞いでるんだ?」
「こいつにんな話聞かせられるか!」

なんでか真っ赤な顔で抗議してくるキルアに俺は首を捻るばかりだ。
あ、ゾルディックの一員になって良かったのはキルア達の兄になれたってことだな。
弟みたいに可愛がってたキルアが本当の家族になるんだからそれは嬉しい。キルアもそこだけは心底喜んでくれてたし。「なんでイルミの嫁なんだよ」って真顔で詰め寄られたけど。そんなん俺が聞きたいわ。
つかやっぱり俺が嫁なの?イルミが嫁ってのも気持ち悪いからお断りだけどな?

「ふふ、この調子なら孫を見られるのもすぐかもしれませんわね。あなた」
「ああ」

待って?孫って、俺とイルミの子供ってこと?無理だよ!?
男同士で子供なんぞできるわけないだろうが!それともゾルディック家は可能なの!?
いやハンター世界なら可能なのかもしれないけど、俺は不可能だからね!?

だから「それなら姪っ子がいい」とか言い出すんじゃねえよキルア!ミルキも!!
アルカとカルトもきらきら目を輝かせるのやめよう!?

「期待されてるね、
「ふざけんな」

……ほんと………本当にさぁ………。

勘弁してくれよおおおぉぉぉぉ!!!!




狂乱の嫁(仮)

[2015年 6月 19日]