古書店フォレストにて
「………店長、どうしたんですかその子」
「俺が知るか」
「え、まさか隠し子…」
「取り置きしてた本、別の奴に回す」
「あああ、すみません調子乗りましたごめんなさい!」
ぼくはいま、フォレストっていうおみせに、おせわになってる。
アンおねえちゃんが、シャンキーせんせいがいそがしくなったから、ごめんねって。
それでぼくをむかえにきたのが、ユリエフおにいさん。
ほんがたくさんあるおみせで、だけどぼくにはよめないじばっかり。
そしたら、えほんをよんでくれた。ネテロのだいぼうけん、ってやつ。
「それで、もしかして私をいきなり呼びつけたのって」
「あぁ。こいつ預かれ」
「は!?」
「ガキの扱いはわからん。それにお前が預かった方が面白いだろうしな」
「面白いって。そもそもこの子はいったい」
「見覚えねえか」
いきなり、ユリエフおにいちゃんにだっこされた。
おみせにきた、おねえちゃんが、じっとみてくる。
「………なんだかさんに似てるような…?」
「当たり」
「え。あ、さんの弟さんとか?」
「なんでそんなのを俺が預かるんだ。兄ちゃんだよ、正真正銘」
「は?」
「兄ちゃんが、小さくなったんだと」
「ええ!?」
「つーわけで、メイサ。お前預かれ」
「な、えっ、ど」
うんと、このひとはメイサおねえちゃん。
「メイサおねえちゃん」
「!」
「よろしく、おねがいします」
ユリエフおにいちゃんにだっこされてるから、うまくおじぎできないけど。
じーちゃんにおしえてもらったように、あたまをさげて。ちゃんと、できたかな?
メイサおねえちゃんをみると、なんだかふるえてる。
さむい?どこか、いたいいたい?
「……っ……無理、です。私ひとりじゃ荷が重くて…!」
「………変態かお前は」
「だってすごく可愛いじゃないですか…!本当にこれさん?」
「残念ながらな」
メイサおねえちゃんのおうちは、すごくおおきい。
まいごになっちゃうから、ここからでないでねっていわれたおへや。
ふかふかのイスのうえで、ユリエフおにいちゃんがくれた、えほんをみる。
えっとね、たしかね。
「ね、て、ろ……の、ぼーけん」
「字の勉強?」
ジュースをもってきてくれたメイサおねえちゃんが、となりにすわる。
「練習するなら紙がいるかな。はい、このペン使って」
「ありがとー」
「何かあったら言ってね。私もここでお仕事してるから」
「うん」
メイサおねえちゃんも、かみになにかかいてる。じのれんしゅー?
すっごくいっしょうけんめいだから、おじゃましちゃだめみたい。
じーちゃんがああいうかおしてるときも、へやはいっちゃだめよってばーちゃんがいうし。
「ネテロは、おやまにのぼりました。きのーも、きょーも、あしたもです」
じのれんしゅーして、ときどきおえかきして。
ジュースがなくなったなっておもったら、メイサおねえちゃんのおでんわがなった。
「もしもし?……うん、そう、そうなの。え!?もう来てるの!?」
おはなししてたメイサおねえちゃんが、ぼくのほうをみた。
「?」
「…さん、ごめん!」
「メイサおねえちゃん?」
あやまると、でていっちゃう。
どうしたんだろう?ごめんなさいするなんて、いけないことしたときだけなのに。
ジュースくれたメイサおねえちゃんは、ごめんなさいしなくていいんだよ?
ぼくがありがとうっていって、そしたらおねえちゃんはどういたしましてっていうの。
それがだいじ、ってばーちゃんいってた。
「ほんとにがちっちゃーい!!!」
「!?」
ドアがばんってひらいて、ぴんくのかみのおねえさんがはいってきた。
はしってきたおねえさんは、ぼくのことをぎゅうぎゅうする。
「あ、こらネオン。さんが潰れちゃう」
「だってだってすごく小さい!なんで?どうしてこうなったの?」
「私も知らないけど…。何日かすれば元に戻るって」
「すっごく可愛い。このまんまコレクションできないかなぁ」
「それは駄目」
「ええー」
「これくしょん?」
「ふふー、あたしのお家に来ない?ってこと。美味しいもの沢山あるよー。ふっかふかのベッドと、玩具もいっぱいあるし。きっと楽しいよ!」
「だから駄目だってばネオン!」
「うんとね、ネオンおねえちゃんがあそんでくれたら、それだけでたのしーよ?」
メイサおねえちゃんも、ネオンおねえちゃんも、ふわふわやわらかい。アンおねえちゃんも。
ぎゅってされるとほっとして、すごくうれしいんだよ。
あ、あとね。
「にこってしてくれたら、それでいーの」
ばーちゃんがにこってしてくれるの、だいすき。
そうするとね、ぼくもにこっとできるから。おねえちゃんたちも、にこってして。
「……こ、この小ささでさんはすでにあなどれない…」
「じゃあ一緒に遊ぼっか!ほらほらメイサも。仕事なんてしてないで」
「…もーわかったよ」
にこにこしてくれる、おねえちゃんたち。
あとでありがとうっていわなくちゃ。
呪術師さんとネオンさんは親友
[2013年 3月 31日]