今回はハンターキャラよりも、オリキャラがメインになってしまいました。
…リクエストの大半がですね、シャンキーと各店長と女の子たちの登場というもので。
ただやたらシリアスになっちゃったなぁ…と(笑)ギャグのターンはお見舞い編で書きたい。
最後に店長たちのおまけ。
[2012年 4月 17日]
俺を呼ぶ声がする。
最初はひとつかと思ったけど、ふたつみっつと。
小さな声がいくつも集まって、ひとつの糸のようなものを作る。
俺はそれを手繰り寄せるようにして歩いて。
あったかい光に触れたと同時に、景色は白く染まった。
「………ここは」
まず見えたのは天井。
重い身体を感じて、俺どうしてたんだっけ?と一度目を瞬く。
首をなんとか動かして白い壁と白いカーテンが見えた。優しい風に、カーテンが揺れてる。
寝惚けた頭なりに考えて、なんとなく見覚えのある場所だと記憶を探った。
あ、そうか。シャンキーの病室だ。
ものすごい前のように思えるけど、俺刺されたんだっけ。
病室にいて目が覚めたってことは、なんとか無事に治療してもらったようだ。
死ななくてよかったー、と手を動かそうとして。誰かに握られたままだと気づく。
おや?とちょっと下に視線を向ければ、ベッドに突っ伏してる銀色の髪。
ぎゅ、と俺の手を握るまだ小さな手。それはキルアのもので。
心配かけたんだろうな、と苦笑が浮かぶ。あ、クラピカも寝てるのが見える。
座ったままだけど、読みかけの本を手にしたまま船を漕いでる。
………って、なんかすっげえイビキ聞こえてくるんだけど、これレオリオか。
ぱっと見た感じじゃどこにいるか見えないから、床に転がってるのかもしれない。
「あ、。目が覚めたんだね」
「…ゴン」
病室の扉が開いたかと思うと、いつも通りの明るい顔でゴンが顔を出した。
ちょっと待っててね、とまた出ていく。シャンキーに起きたことを報告に行ったんだろう。
今回は医療費いくらぐらいかかんのかなー、と冷や汗が出る。
緊急手術だったろうし、キルアがこんな風に甘えてるぐらいだ。…けっこう危険だったんだろう。
それなりに口座にはあるけど、赤字にならないといいなぁと溜め息がこぼれた。
「さん!」
どたどたどた、と足音が聞こえてきたかと思えば顔を出したのはメイサ。
………え、メイサ?なんでこんなとこにいんの。メイサも入院中?
いや全然元気そうだよな、健康診断に来てたとか?
「あ、よかった本当に目が覚めたんですね。イリカさん、もう大丈夫ですよ」
「よ、よかった…」
ってアンはともかくイリカまでいるー!!!??
えっ、あれっ、店は!?店長ひとりでも店は開けるらしいけど、でも!
混乱する俺をよそに、女の子三人が病室に入ってきた。
キルアが繋いでいるのとは逆の手をとって脈を測ってくれるアン。
メイサはしきりに身体に違和感はないかと尋ねてくるし、イリカも妙に心配そうだ。
………もしかして俺のために来てくれたのかな皆。うわ、嬉しいけど申し訳ない。
大丈夫だよ、と声をかければ三人とも泣きそうなほっとしたような顔で笑った。
わあああ、女の子になんて顔させちゃってるんだ俺!
「…ありがとう、三人とも」
ホントごめんよー、きっと寝てないんだろ顔色あんまよくない。
俺のためにそこまでしてくれる皆は、すごくすごく素敵な女の子たちだ。
こんなところで横になってる自分が情けなくて、眉が垂れる。
「ふあぁ…まだ寝ててよかったってのに…色男、目覚めんの早すぎ…」
ぼっさぼさの髪を結ぶこともせず、欠伸を噛み殺しながらビン底メガネがやって来た。
完全寝てたんだろう、いつもは肩にかけている白衣すらいまはない。
アンに脈を確認して、あぁ大丈夫そうだなと適当に頷いている。…マジで適当じゃねあれ?
ってシャンキー!その片手に持ってる酒瓶はなんだ!!
「ああ、これ?俺のエネルギー。ちょっとオーラ使いすぎたわ。ラフィーくんのケーキでも元気になるんだけどねー。それは後でいただくとして」
「あ、いま店長どうされてますか?」
「仕込中。どうやら朝食を作ってくれるらしいよ、今日は店休みにするんかねえ」
「突然休みになることはそう珍しくないですから」
手伝ってきますね、とイリカは病室を出て行った。え、ちょ、イリカ寝なくて平気ー!?
………というかまさか、ラフィー店長まで来てるのか。おおおおおおおおおお、どうしよう。
俺なんかすっごい色んなひとに迷惑かけてるんじゃね!?
そんでもってメイサはさっきから俺の腕とったり髪に触れたりしてるけど、なんだろう。
何かを調べるように凝視されてるっから、声をかけられない。すげえ真剣で。
「………多分、大丈夫かな」
「…メイサ?」
「身体から完全に排除できてるみたいです。後遺症もないようだし」
「さっすがユリエフくんの秘蔵っ子。優秀、優秀」
「いえ、そんなんじゃ………。あれ、店長どうしてるんですか」
「ユリエフくん?俺の蔵書漁ってる」
「………店長」
「医学書が主なんだけど、俺の個人的な趣味の本もあるからさ。文字ならなんでもいい、って感じで書斎に引き籠られた。ああなると長いから放置中ー」
「す、すみません」
「メイサ嬢が謝ることないっしょ。くくく、ユリエフくんも良い子ができたもんだ」
妙に嬉しそうに笑ったシャンキーは、アンに点滴の指示だけ出して病室から出ていく。
もう一度眠るらしい。………酒瓶片手に。
「じゃあさん、点滴変えますね」
「…うん、頼む」
しかしこれだけひとの気配してんのに起きないな、こいつら。
わしわしとキルアの頭を撫でてみる。うーんと唸る声が聞こえて。
まだまだ子供らしい反応に、メイサとアンがくすりと笑った。ああ、なんかすげー良い空間。
ちびっ子を見て笑う女の子って、なんかこう…いいよな。
そんでもってしばらくしたらイリカが食べ物持って顔出してくれんだろうし。
………俺、腹刺されたわけだけど。絶食かな、やっぱ。
せっかくラフィー店長が来てんのに食べられないとか、嫌だ。
恐る恐るアンに確認してみると、昼からは食べても平気とのこと。よかったー。
「お腹切開したのに一日で食べられるって、すごいですよね」
「…普通無理だよな?」
「そう、ですね。シャンキー先生の手術の場合は割と術後すぐ食事されますよ」
「へえ」
「でもさん、あんなにひどい状態だったのに…」
何かを思い出したのか、眉間に皺を寄せるメイサ。
え、メイサも俺の状態見たの?なんでだ?つか、どんだけヤバイ状態だったの俺。
「う…………」
「…あぁ、目が覚めたか。おはよう、キルア」
「………?…………!?」
寝ぼけ眼だったキルアが、がばっと身体を起こす。
おはよう、ともう一度声をかけると大きな目が揺れた。だけどそれは一瞬で。
すぐさま怒ったような拗ねたような顔をして、ヘマやらかしてんじゃねーよ!と怒鳴られた。
心配してくれたんだなーとわかるから、俺はもうにやけそうなのを必死で堪える。
ごめん、と一応謝ったけど。にやけてるのがバレたのか、ますます頬が膨らんだ。
か、かわいい。ほっぺ潰したい。
より怒らせそうだからやらないけど、あぁでもうずうずする。
「そろそろ朝ごはんできるって!あ、キルアも起きたんだね、おはよう」
「ゴン。お前よく朝から元気だな」
「いつも通りだよ?クラピカとレオリオも起こさないと」
「じゃあ私は店長を書斎から引っ張り出してくる」
メイサが出ていくのを見送り、まさかユリエフ店長までもいるのかと俺は慄く。
しゅ、集結しすぎじゃないのかこの病院に。
身体を起こすのをアンが手伝ってくれる。
その間にちびっ子たちが、レオリオとクラピカを起こす。レオリオは文字通り叩き起こされてた。
俺が起きてることに気づくと、二人とも物凄い形相で意識がはっきりしてるか確認してきて。
クラピカに至っては、私との出会いを覚えているかという訳のわからないことまで聞いてきたぞ。
むしろお前の方が意識が混乱してるんじゃないか、と返したいぐらいだった。
歩いても大丈夫だそうで、点滴をつけたまんま食堂へ。
お腹はほとんど痛くない。すごいよな、シャンキーってすごく腕が良い。
本当にラフィー店長が迎えてくれて、もう俺は恐縮するばかりだ。
店休ませちゃってすみません。なんかもうホントご迷惑おかけっぱなしで。
元気そうでよかった、と微笑まれればもう俺はどうしていいか。
………俺、すごく幸せ者だって思う。
日本にはやっぱり帰りたいって思うんだけど。でも。
こうして俺を心配して駆けつけてくれる人達がいる、そんな世界も大好きで。
もうここは俺のもうひとつの世界なんだ、って。
そう思えた。
今回はハンターキャラよりも、オリキャラがメインになってしまいました。
…リクエストの大半がですね、シャンキーと各店長と女の子たちの登場というもので。
ただやたらシリアスになっちゃったなぁ…と(笑)ギャグのターンはお見舞い編で書きたい。
最後に店長たちのおまけ。
[2012年 4月 17日]