というわけで、次回から四次試験開始です。
[2012年 5月 29日]
「う………」
「目が覚めたか?」
「……?」
朝日が差す頃、ようやくクラピカが目覚めた。
砲撃のおかげなのか、竜巻はすっかり消えて、黒雲は影も形もない。
海を穏やかに航行する軍艦島に、俺たちは無事に生き延びたんだということがわかった。
副リーダーとして頑張ったクラピカに、お疲れと笑う。
まだぼんやりした様子のクラピカだったけど、眩しそうに目を細めて笑い返してくれた。
そして生き延びた俺たちを迎える飛行船が見えて。
どうやら次の試験を受ける資格があると認めてもらえたらしい、と。
朝日を浴びて清々しい気持ちで皆笑い合った。
ほぼ徹夜のような状態のため、受験生たちは飛行船に乗ると仮眠に入るひとが多かった。
俺はそれほど疲労してない。…いや、精神的な疲労はけっこうあったんだけど。
でも体力的にはあんまり動いてないから、のんびりラウンジに足を運んでた。
次の試験の準備をしておこうと思って。
ゼビル島で行われる四次試験。狩る者と狩られる者。
この試験は、受験生たちの間でナンバープレートを奪い合うという内容だ。
強力して試験を乗り越えた後で、今度はお互いが敵になる。なんともえぐい。
ゼビル島で過ごす間は、自力で食糧とかも手に入れないといけない。
遺跡探索とかゴミ山で過ごした経験とかで、サバイバルはそれなりにできるけど。
でもどうせならまともなもの食べたいじゃん?というわけで。
俺は保存が効きそうな食べ物を注文して、持ち運びしやすいようにしてポケットへ。
………っていうか、生き残れんのかな次。俺が狙うことになるのって誰だろう。
しかも俺を狙う受験生もいるってわけで。うう、胃が痛くなりそうだ。
「こんなとこで何してんだよ」
「キルア。お前も食べておけ」
「むぐ」
ひょっこり顔を出したキルアの口にハムを突っ込む。
目を白黒させたちびっ子は、素直にもぐもぐとそれを咀嚼した。
「…なんでメシ?」
「食べられるときに食べておいた方がいい」
「そりゃそうかもしんないけどさ。俺はの作ったもん食いたい」
「……試験が終わったらな」
「あ、そうだ!試験終わったらん家行っていい?」
「…俺の家?」
なんだってまた、と首を傾げるとキルアが身を乗り出す。
「行ったことねーんだもん」
「……まあ、誰も呼んだことないしな」
俺の家、って言える場所はシャルの家なわけで。
あいつは気にしないだろうけど、でも勝手に客を呼ぶのはちょっとなー。
もうひとつ家と呼べるのは、ゲームの世界の中にあるけど。そここそ、まだ無理だろ。
…っていうかグリードアイランドの家は他人に教えちゃいけないんだった。
俺だけの家、ってのいつかゲットしたいよな。いつまでもシャルに迷惑かけらんないし。
ハンターになれれば、身分証明書もできるからそれも夢じゃない。
なんてことを考えてたら、痺れを切らしたキルアが顔をずいっと近づけてきた。
「合格祝いに、ん家に遊びに行きたい」
「………すぐには無理かもしれないけど、わかった」
「えー、なんで駄目なんだよ」
「…やっぱり許可取らないとだろう」
「は?許可?」
「俺だけの家じゃないんだ。もうひとつはちょっと、言えない場所にあるし」
何それ、って猫目をぱちぱち瞬くキルア。
どう説明しようかと思っていたら、今度はやたら不機嫌そうな顔になった。
「…同棲してるってこと?」
「いや、ちょっと違う。むこうは気が向けば寄るぐらいだ」
「……ふーん」
「もともと俺が根なし草の生活だったからな。ちゃんとした俺だけの家を買ったら、キルアを招待するよ。もちろん、食事つきで」
「約束だからな」
「あぁ、約束だ」
俺の家が持てたら本当良いよなぁ。
キルアとかシャルとか、お世話になった人達呼んでちょっとした食事とかして。
…そのためにも、四次試験を頑張って生き残ろう。
生き残る、ってのは正直そんなに難しくないと思うんだ。俺の念を使えば。
問題は、どうやってターゲットのプレートを奪うか、ってこと。
俺から仕掛けるのって、苦手なんだよな。基本的に専守防衛だから俺。
ゴンみたいに釣竿とか使えればなぁ……。念使って奪うことは可能だろうけど…うーん。
「、これ何」
「……干し芋だ。うまいぞ」
「これがぁ?」
「噛めば噛むほど味が出る」
「へー、ガムと反対か。………って、意外にかてぇ」
「けっこうもつから、気に入ってる」
もぐもぐずっと口を動かしてるキルアは可愛い。
ケーキが大好きな俺だけど、こういうのも好きだ。甘いもの全般好き。
今度ハンゾーにおいしい和菓子屋を教えてもらおうかな。
「キルアここにいた!」
「お、お前も食うか?」
「あれ、なんかおいしそうなのが色々あるね」
キルアの隣に座ったゴンがメニューを手に足をぶらぶらさせる。
頼みたいなら頼むといい、と促して俺は干し芋を袋に入れる作業を再開。
いまだに干し芋を噛んだままのキルアだけど、嫌いな味ではないらしい。
食べたことない感じだと言いながら、興味深げに味を確認してる。
結局は普通に食事を始めるちびっ子たちは元気いっぱいだ。
徹夜明けだと俺はあんまりがっつりは食えないんだよなー。
というわけで、俺は紅茶を注文。うん、落ち着く。
「ようやく四次試験だね!ゼビル島で何やるのかな」
「さーな。なんかハンターらしい試験がきてほしいぜ」
「はどう思う?」
「………四次試験ともなれば、それなりに難易度の高いものになるんじゃないか」
内容知ってるけど言えないんだ、ごめんよゴン。
俺に未来予知の力があるとか思われたら困るし。原作通り進まない可能性もあるし。
願わくば、俺がなんとか死なずにすみますように!
というわけで、次回から四次試験開始です。
[2012年 5月 29日]