第120話

ゼビル島に到着するまであとちょっと。
…あー…めっちゃ良い天気。空が青いよ、カモメ飛んでるよ。
清々しい天気なのに………俺の気分は地の底を這うように悪いわけで。

ついに四次試験が開始しちゃうよー、怖いよー、俺死ぬよー。

鬱々と俺がしている間にも、試験官のリッポーが姿を見せた。
そしてくじ引き用の箱が運ばれてくる。

「さて、ハンター試験もあと四次試験と最終試験のふたつのみ」

あ、そうか。これ終わったら次は最終試験か。
………最終試験、か。この四次試験を乗り切れたとして、次の試験は大丈夫なのかなぁ。
キルアが不合格になれば他のメンバーは合格になるはずだけど。
俺がいることで流れが変わったりするんだろうか。それはそれで困る気がする。

「四次試験に臨むにあたってだが。これから諸君にくじを引いてもらう」

運ばれてきた箱の中には人数分のカードがある。
タワーを脱出した順番にそれを引くよう指示されて、受験生たちが一列に並んだ。
えーと俺はアモリ三兄弟のとこに並べばいいんだよな。
あ、そうだ俺のナンバープレートしまっておこう。怖い、怖い。
こういう運って俺微妙なんだよなー。良くもなく、悪くもなく、中途半端なところにくるっていうか。
とりあえず強いヤツじゃありませんよーに!

箱の中からカードを引いて移動する。
ばくばく心臓の音が聞こえてくる自分を落ち着かせて、カードをちらり。

………80番。

ちょ、誰ええええぇぇぇぇぇ!!これ誰ー!!?
さり気なく見回してみるけど、視界に入る場所に立ってるひとでそのナンバーはない。
ええっと奥の方も見てみ…………うおおお、説明聞いて皆プレートしまっちゃったー!!

四次試験は狩る者と狩られる者。
くじで引いた番号のプレートを奪うことが目標になる。
自分のプレートが3点、標的のプレートが3点、その他の受験生のプレートは1点。
期限までに6点分のプレートを集めていれば合格ということになる。
一番楽な方法は、自分と標的のプレートを所持すること。
でも別にターゲットじゃない受験生から三枚プレートを奪うんでもOK。

……はあ、できればターゲットを見つけて一回だけ接触すれば済むのがよかったんだけど。
って、俺を狙うヤツもいるわけだからそこも警戒しないといけないんだよな。
うー、本当にサバイバルでやだなぁ。

「ここで皆さんに、素晴らしいお知らせがありまーす!」

リッポーの助手らしき明るい女の子が笑顔を見せた。

「ここにいらっしゃる皆さんには、来年のハンター試験の一次試験まで無条件で進める特典が与えられまーす。もし今回ダメでも、来年また挑戦して下さいねー!」

………素晴らしいお知らせじゃないだろ、それ。
不合格になるのが前提ってのがものすっごく虚しいんですが!?






あとは島に到着したら試験開始だ。
んーキルアとかゴンが知ってるとは思えないよな、他人の受験番号。
クラピカなら覚えてっかなー、どうだろう。

「あ、ー。ターゲット何番?」
「ん」

スケボーに乗ってやって来たキルアにカードを見せる。
猫目をぱちぱちと瞬いたキルアは、誰これ?と首を傾げた。だよな、うん、予想通り。
溜め息を吐いてカードをしまう。キルアはアモリ三兄弟の誰かだっけ?
トリックタワーでは一緒に行動したけど、三人のどれがどの番号だったか覚えてないなぁ。

「ゴンのヤツさ」
「?」
「ターゲット、ヒソカだって」
「………縁があるらしいな」
「ありえないよなー。けどあいつ、楽しそうでさ」
「ゴンらしい」

ここでヒソカがターゲットになったのは、本当にある意味で運命みたいなもんだと思う。
ゴンにとってのターニングポイントのひとつでもあるから、頑張って試験を終えてほしい。
俺はとりあえず生き残るのが目標だ。点数を集められる自信はまったくもって、ない。
いよいよ、俺が試験をリタイアするときが来たってことだろうか。

ぼんやり海を眺めてると、ゼビル島に到着のアナウンスが。
トリックタワーをクリアした順番に島に入ることになり、最後になるキルアとは分かれる。

俺はけっこう前の方だから、島に入ったらまずは身を隠そうそうしよう。
小心者だって?そうだよものすごく怖いんだよ、とりあえずは身の安全の確保が優先!
俺のターゲットについては、もう誰かわかんないから諦めるとして。
どうやってプレートを集めるかは、後で考えよう。






せっかくのチャンスを逃し、標的を見つけられないダメっ子。

[2012年 6月 10日]