第127話―イルミ視点
あ、俺とが当たる。
貼り出されたトーナメント表を見て、ふむと唸る。
一勝すればそれで合格。妙なシステムだけど、まあそれはいいや。
どうしようかな、と戦ってみたい気もするけど。
やヒソカのレベルになると、なかなか試合って形式では戦えない。
個人的に戦うとなると命の取り合いになっちゃって、無傷ではいられなくなる。
そこまでして戦いたいとは俺は思わないから、ヒソカの誘いはいつも断る。
多分それはも同じで。しつこいヒソカを嫌がってた。
でも今回は公式の試合。
殺しちゃいけない、ってルールもあるから手合せにはもってこい。なんだけど。
でもこのままいくと、もしかしたらキルと試合ができるかもしれない。
家出したキルとちゃんと話す機会だ。…まあ、俺と試合する前に合格したらダメだけど。
でもあれは自分の力を過信する傾向がある上に、ゲームを楽しみたい性格でもある。
あっさり勝つなんてことしないで、わざと負けたりしそうな気もするんだよね。
どうしたものかと悩んでいる間に、ゴンとかいう子がいたぶられる。
拷問慣れしてる俺からすると大したことじゃないんだけど。
………キルが動揺して見えるのは、ゴンが特別な存在だから?それは、困るな。
俺たちには家族以外への執着はいらない。
信じられるのは血の繋がる一族だけ。それだけでいい。
子供のうちは友達とかに憧れるのもわかるけど、そんなのはいらない。
それは弱さの証だ。ゾルディックを継ぐお前にそんなものは必要ないんだよ。
キルに限ったことじゃない。俺たちの世界で生きる人間は皆そう。
ほら、ヒソカもも表情を変えてない。
弱ければ死ぬ、強ければ生き残る。それが俺たちの生きる世界の摂理だ。
弱い者は寄り集まることでしか生きていけない。
けど俺たちは狩られる側じゃなく、狩る側。群れる意味はない。
なのにそんな顔しちゃって。ほらも呆れて頭を叩いてるじゃないか。
子供扱いされてるよ、まだまだ一人前には程遠いよね。
うん、これはやっぱり一度ちゃんと叱っておかないと。
よくわからないけど、ゴンは合格したみたい。
実力的にはハンゾーとかいうヤツの方がはるかに上だったんだけど。
妙な空気になった後はゴンのペースで、そのままハンゾーが負けを認めた。
この結果にキルは納得がいかなかったらしい。
俯くキルの頭をが撫でて宥めてる。そこ俺のポジションなのに。
そうこうするうちに試合が進んで、俺との番。
「それでは301番と350番、前へ!」
部屋の中央に移動する俺よりも、随分と遅い動作でが歩いてきた。
やる気がないのかと思ったけど、ぞわっと鳥肌が立って違うとわかる。
むしろ、逆かな。
互いにルールがある比較的安全な状況で手合せできる。
それを楽しもうと思ったのか、のオーラがざわざわと膨れ上がっていく。
俺に向けられた焦げ茶の瞳は殺気を孕んで鋭い。
困ったな、こんなオーラをぶつけられたら俺も応えたくなるけど。
でもごめん、今回はキル優先で。
「準備はよろしいですか」
審判の声を合図に、がわずかに身体を沈めた。
「はじめ!!」
呼吸と共に動き出そうとしたに、俺は一言。
「まいった」
ちゃんと聞こえたみたいだ。
あ、珍しく驚いた顔してる。貴重だな、母さん見たがったかも。
「301番、いまなんと?」
「まいった」
これで俺の負けだよね?
あとはもういいはず、と元の位置に戻ろうと足を動かす。
びしばしとの刺々しいオーラが刺さるけど。
ごめん、ごめん。
俺も残念だけど、家族が一番大事だから。
それにこれではハンターに合格なんだからいいじゃない。
イルミさんの中で主人公は好戦的認定されているらしい。
[2012年 7月 31日]