ゴンに好奇心いっぱいなキルアが可愛いと思うんですが、どうだろう。
[2012年 1月 8日]
超難関っていわれてるハンター試験。
家を出てすることもなかった俺は、思いつきでこの試験を受験してみた。
んとこに世話になろうにもさー、あいつ仕事中だと連絡つかないし。
それに俺の携帯、家に置いてきたまんまなんだよな。絶対うるさく鳴るだろうから。
そんなわけで試験会場に来てみたけど。
なんていうか、パッとしない。あの44番はヤバそうだけど。
一次試験はただひたすら走るだけ。
どんなスリル満点の試験かと思いきやマラソンかよ、と拍子抜け。
あーあ、こりゃ噂だけで実際は大したことねーのかも。
そう思ってたんだけど、受験生の中に俺と同じぐらいのヤツがいた。
名前はゴン。聞いてみたらまさに同い年。
ハンターである親父に憧れて試験を受けたって言うんだけどさ。
その親父がどんなヤツか知らないっていうんだぜ?意味わかんねー。
話してて飽きないっていうか変なヤツ。こいつとなら、試験も退屈しなくて済むかも。
そう思ったんだけど。
「レオリオ!」
霧の中、分断された後続にいるだろう連れの声が聞こえたらしく。
ここで戻ったら試験官を見失うっていうのに、ゴンは駆け戻っていった。
馬鹿なヤツ。他の人間のために不合格になるとか、甘ちゃんだな。
ちぇ、これでまた退屈な試験に逆戻りかよ。
どーすっかな。飽きたら途中でリタイアしてもいいんだけどさ。
それならゴンを追いかけてもいいけど、そこまでするほど仲良くなった覚えもない。
あーくっそ、なんでゴンのことでこんな考えてんだ俺。
もやもやする、と眉間に皺を寄せてると。ぽん、と不意に頭を撫でられた。
俺が、後ろからの接近に気づかなかった、と瞬間冷や汗が出る。
「心配するな、あの子たちならすぐ合流してくる」
「…………え」
聞き覚えのある、ここにいるはずもない声。
訳がわからず顔を上げれば、想像した通りの焦げ茶色の瞳がそこにはあった。
「………?」
「あぁ」
「………は、え?………」
「キルア?」
「な、なんでお前ここにいんの!?」
仕事中だったんじゃないのかよ!?
だから俺、家出する前に電話も何もしなかったのに!
なんでこんなとこにいるんだよ!
答えてくれるかわからないまま聞いてみたら、はあっさりと。
「仕事で必要になったんだ」
「仕事?…って、兄貴絡みじゃないだろうな」
はイルミと組んで仕事することが多い。
あの兄貴が信用する数少ない人間だ。だから、俺を連れ戻しに来た可能性もある。
警戒しながら確認してみると、はすぐに否定した。
「イルミは関係ない。別のとこで契約してる仕事だ」
「ならいいけど」
は嘘をつかない。だから本当にイルミとは関係なく、受験してるんだ。
それがわかってほっとした俺は、ようやく久しぶりの再会を喜べる。
久しぶりじゃん、と笑えばもう一度わしゃわしゃと頭を撫でられた。
やめろよな昔みたいに子供扱いすんの。俺も昔みたいに抱き着きたくなるだろ!
…あ、そういえばさっきこいつ。ゴンのこと合流してくるって言ってたよな?
「っていうか、ゴンと知り合い?」
「いや?まだ話したこともない」
「なのになんで大丈夫ってわかるんだよ」
「あのメンバーは受かるよ、多分」
淡々と事実を述べてるだけ、って調子で言われて俺は眉を上げた。
へえ、がそう言うってことはあいつらそれなりの実力があるってことか。
まあ確かにゴンは俺のペースについてこれるぐらいだから、まあまあなんだろ。
けどあの他の二人…えーと名前なんて言ったっけ、覚えてないや。
あの二人もそれなりに使えんのかな、そうは見えなかったけど。
「同年代の知り合いができてよかったじゃないか」
「ばっ…!別にそんなんじゃねーよ!ゴンは妙でおかしいから、見てて飽きないってだけ」
「素直じゃないな」
「だーもう!」
俺が友達いない寂しいヤツとでも言いたいのかよ!
つか友達とかいらねえよ、俺は。うちの事情で、んなの無理だし。
の目許が笑ってんのがムカツク!そんなことより、いまは別の話題。
「なあ、」
「ん?」
「この試験、どう思う?」
ただ走ってるだけで、なんの刺激もない。
ヌメーレ湿原とかいう場所は確かに妙な生き物がうようよいるみたいだけど。
だから何?って感じじゃん。
も退屈してんじゃないかと思って聞いてみたら、ちょっと考える素振りを見せた。
「嫌いじゃないけど」
「マジでー?俺なんか拍子抜け。ただ走るだけじゃさ」
「まだ一次試験だ。この後どうなるかわからないだろ」
「それもそっか。けどなぁ、退屈しそー」
そうこうしてるうちに、なんか建物が見えてくる。
お、あれがゴールか。
二次試験会場まで辿り着いたわけだけど、やっぱりゴンはいなくて。
けどは焦る様子もなく、隅の方に移動して木に寄りかかって座る。
森林の中に溶け込むように気配が薄くなったのを見て、ようやく納得した。
俺があいつの存在に気づかなかったのは、ああやって気配を消してたからだ。
は普通に歩いてたらすごく目立つ。もう空気から違うから。
「なんで気配殺して参加してるわけ?」
「………目立ちたくないから」
そりゃ俺たちみたいに裏稼業の人間はそれが鉄則だけどさ。
ハンター試験を受ける連中なんて、一般人はほとんどいないだろ?
そこまで気にすることないと思うけどなー。
「キルア」
「んー?」
「ゴンたち、来たぞ」
「え」
マジで?
が指さした方向を見ると、慌てた様子でどこかへ向かってるゴンが。
うっわー、マジでいる。どうやって合流してきたんだ?
思わず近寄っていくと、ゴンは金髪のクラ…クラ…なんだっけ。
金髪のヤツと一緒に、座り込んでるおっさんの前で立ち止まった。
おっさんじゃないんだっけ?十代とか嘘みたいなこと言ってたけど、おっさんでいいや。
おっさん、なんか顔腫れてるけどどうしたんだ?
聞きたいこと沢山ありすぎて、ゴンってヤツが意味不明すぎて。
俺はなんだか楽しくなって、口を開いて。あいつの名前を呼んでいた。
ゴンに好奇心いっぱいなキルアが可愛いと思うんですが、どうだろう。
[2012年 1月 8日]