第166話

俺が天空闘技場に戻ったときには、すでにサダソ戦は終わってた。
キルアとゴンの修行は順調に進んでるらしくて、練を見せてもらったけどすごかったよ。
……一日で凝を習得しちゃうとかホント化け物だろこいつら。

「ねーねー、の練も見せてよ」
「え」
「あ、確かに見てみたい。つかさ、念をいつ覚えたんだよ?」

ウイングさんの修行ノルマをこなしての休憩中。
ちびっ子たちが興味津々の顔で俺に詰め寄ってきた。…ズシもひそかに目を輝かせてる。
いや、いやいやいやいやいやいやいや。
ズシはともかく、キルアとゴンの前で見せるのはちょっと…!
ヘボいって思われたら俺立ち直れないんですけど!?
ウイングさんに太鼓判は押してもらってるけどだからって!

「あー……念を覚えたのは…キルアと会う数か月前ぐらい、かな」
「え、マジで?」
「あぁ。基本的な念の戦い方をマスターしたのはここでだったよ。キルアたちと同じだな」

俺の場合は漫画の知識を教科書に覚えていった感じだけど。

「じゃあ俺と会った頃って、まだ念も完成してなかったってこと?」
「あぁ。どんな能力かも全然。纏は覚えてたけど、凝はやっぱりここで習得したかな」
「へー、本当に俺たちと同じだ」
「隠、だっけ?あれっても使えんの」
「俺の能力はそういうのを使う必要がないから、試したことはないな」

直接攻撃できるような能力って俺は持ってないし。
時間を動かす能力ってだけで、それ自体が武器になることはない。

の能力って?」
「んー………。二人って<発>はもうやったか?」
「「<発>?」」
「あ、四大行に書いてあったよな」
「そうだっけ?」

あ、これやってないな。つまり二人はまだ自分の系統を知らないわけだ。
となると俺の能力を説明するのはちょっと早い気もする。
どんな系統があるかの基礎を覚えてからの方がいいよな。
あ、でもすでにヒソカとかカストロの能力は見てるのか。

「二人が発をやって、自分の念がどんなものかわかったら教えるよ」
「えー、いいじゃん教えろよ」
「そう簡単に教えたらつまらないだろ?頑張って発まで辿り着くんだな」
「俺の念がどんなものか…うん、早く知りたい!ね、キルア」
「………まあ、何ができるのかは知っておきたいな」
「そのためには修行を頑張れ。ほら、休憩時間はもう終わりだぞ」
「はーい」
「へいへい」

ゴンは強化系、キルアは変化系。ってのは俺はもう知ってるんだけど。
自分の系統を知るってすごく楽しみな部分だろうから、内緒にしておこう。
…特質系だと<発>やっても意味不明で泣きたくなるけどな。






「しかしくんの顕在オーラ量は凄まじいですね」
「おかげで念を習得したときは纏が苦手だった」
「あぁ、確かに難しいかもしれませんね」
「というか、ウイングさんに教えてもらうまで苦手なままだったんだけど」
「おや、とてもそうは思えませんでしたが」

練の訓練を終えてのウイングさんの言葉に俺は恐縮するばかり。
なんつーかさ、俺の周り規格外ばっかりだから標準レベルがよくわからないんだよな。
本気になったウボォーの練とかヤバイなんてもんじゃないから!地震かって錯覚するぞ!

…………って、あれ。

「キルアもゴンも静かだけど、どうした」
「…っ…どうしたもこうしたも、ねえよ」
「…の練、すごいや…」

呆然と見上げてくるゴンとキルアに俺はほっとした。
よ、よかった、こんな短期間で追いつかれたらこれまでの俺の生活の意味が…!
いや別に強くなろうと思って生きてきたわけじゃないからいいんだけど。
でも死にかけながらなんとか生き延びてきたから、ちょっとはこう…。

「彼に殺気がないからこの程度ですんでいますが、実際に戦闘となったらもっと圧迫感のあるオーラになると思いますよ」
「あ、そっか」
「…ヒソカとやり合ってたときヤバかったもんな」
「俺たちももっと強くならないと」
「練のオーラってさ、修行で増えてくもんなの?」
「勿論。普通であれば練の持続時間を十分伸ばすのに一か月かかりますが、ゴンくんたちならもっと早く成長していくでしょうね」

ズシが何か月もかけてマスターしたことを、一日で覚えちゃうんだもんな。
主人公たちなんだからレベルが違うのは当然だし、頼もしいとも思うけど。

練の訓練は俺もきちんとやってった方がいいんだろうなー。あと点も含めて。
それなりにオーラ量はあるみたいだけど、これからどんなことがあるかわからない。
表にオーラを出しやすい俺は、逆に潜在オーラがすぐ底をつく可能性が高い。
オーラは無限じゃないから、使いまくればなくなる。そうなるとバテちゃって何もできなくなる。
練と点で訓練を重ねれば潜在オーラも増えるらしいから、頑張ろう。

そう決意して今日もノルマを終えて俺はキルアたちと一緒に天空闘技場の部屋へ。

「明日は俺がギドと、キルアがリールベルトとだね」
「おう。は?観に来るのか?」
「一応」
「なんだよ一応って」
「お前たちが勝つのはわかってるから、観なくてもいいかと思ったりも」

いくら200階の選手たちが念能力者とはいっても、我流で覚えた人間ばっかだ。
それに念に頼り切りで本来の戦闘技術は大したことないヤツが多い。
オーラも桁違いな上にポテンシャルも高いキルアとゴンが、負けるはずないんだ。

俺の言葉に顔を見合わせた二人はその予想を肯定するように。
自信に満ちた笑顔を見せてくれた。





ギド選手とリールベルト選手に死亡フラグが立ちました

[2013年 6月 2日]