第170話

今回は飛行船から叩き落とされるなんてことはなかったよ!

けど俺はゾルディック一家ではないので、試しの門から入る必要はある。
匂いをミケに覚えておいてもらわないと、敷地内で安心して過ごせないからさ。

そんなこんなでミケへの挨拶も済ませて、カルトに会いに本邸に。
寝泊りは執事の館にさせてもらえるけど、初日はやっぱり親御さんにご挨拶すべきだろうと。
玄関ホールに入るとカルトが待ち構えてて、俺を見るなり駆け寄ってきてくれた。
キルアはさすがにこういうこともうしないから、ちびっ子らしい行動を見ると感動する。
そうだよ、昔はキルアだってこうやってぱあって顔明るくして抱き着いてくれたんだよ。

いまみたいに素直になれず照れ臭そうにしてるキルアも可愛いけど!
でもたまにはこういう癒しも欲しくなるわけなんです!!

「カルト、元気にしてたか」
「うん。に教えてもらえるの、すごく楽しみにしてた」
「念を起こすのは……あぁ、もう大丈夫そうだな」

起こしてるところ、なんてイルミは言ってたけど。すっかりオーラがカルトを覆ってる。
纏と言うにはちょっとまだ安定してないっていうか、もやもやした状態だけど。
それはこれからの修行できちんと綺麗に安定させられるよう覚えてもらうんだろう。
あ、そういえば俺カルトがちゃんと戦ってんの見たことないや。

原作でもカルトの戦闘シーンって…俺が読んでた範囲だとない、よな。
G・Iで絶を使ってるシーンはあったから、あーもう念覚えてるんだーと思った記憶はある。

「ようこそいらしてくださいました、さん」
「……お邪魔してます」

階段を優雅に下りてきたのはキキョウさんだ。
本邸に滞在してくださればよろしいのに、と残念そうな姿にとりあえず謝っておく。
俺の腰に抱き着いてるカルトも無言で何かを訴えてる気がするけど頭を撫でて誤魔化す。
無理無理無理、キルアもいないのにゾルディックの本邸に泊まるとか無理!!

「じゃ、あとはよろしく」

いつものように片手を挙げて、イルミは俺に全てを丸投げしやがったのであった。





とりあえず広いゾルディックの敷地に出た俺は、カルトのオーラの状態を確認して。
やっぱりまずは纏をきっちり習得するのが先かなと判断する。
キルアもそうだけど、ゾルディックの人間はムラッ気が多い。
俺に言えたことじゃないんだけど、オーラが安定しない。
単純にビビりな俺と違って、キルアたちは殺意というか衝動を抑えるのが下手というか。
人を殺すことに対して躊躇いがない分、オーラを抑えることも苦手みたいだ。

あ、でも仕事のためなら綺麗に絶だってやってのけちゃう。
つまりはプライベートで我慢することが苦手、ってこと。……いや、うん、まあね?
私生活でぐらい好きに過ごしたいって気持ちはわかるんだけどさ。殺人衝動はちょっと…。

、纏の修行ばっかり。僕ちゃんとできるよ?」
「やろうと思えばできる、ってレベルだろ。無意識でも安定させてできるようにならないと」
「?」

どうして?とお人形のような顔が見上げてくる。
小さい子が虫とかを殺しても何がいけないのかわかってない、という状態に近い。
ゾルディックという特殊な環境下で情操教育なんて見込めないだろうし、どうすれば。

「ね、
「んー?」
「手合せしたい。一緒に修行できるの、二週間だけなんでしょ?」
「手合せ…」

え、カルトと手合せ?いや、いやいやいやいや、それは俺にはハードルが高いぞ。
どんだけ実力があるかは知らないけど、確実に俺より身体能力は上だろう。
その上にまだ開花したばかりとはいえ念だって習得している。
俺にとっては危険きわまりない相手なのに手合せとか!!

多分、死にやしないとは思う。ヒソカや旅団の奴等とやり合ったこともあるし。
生き延びるだけなら大丈夫なんだろうけど、俺がいま任されてるのは修行だ。
逃げるばっかりじゃ…………あ。

「カルト、ちょっと遊ぼうか」
「…遊ぶ?」
「纏の状態を維持しながら、鬼ごっこしてみよう」

なんだそんなこと、と静かな瞳が瞬く。
ふっふっふ、甘く見るなよー初心者に纏を維持したままってのはキツイぞ多分。
………規格外でけろっとしてる場合もあるけど。でも、安定させるのが苦手なカルトなら。

「それで俺を捕まえられたら、手合せするよ」
「!ほんと?」
「うん」
「ならやる!」
「じゃあ決まり。とりあえず纏をやってみろ」

俺の言葉にカルトを覆っていたオーラがぴったりと安定して小さな身体を包んだ。
ほらー、やればできるのに何で制御しないかな。

「あ、それから」
「?」
「これも修行の一環ってことで、俺も念を使って逃げるからな」
「え」
「あぁ、カルトに攻撃するようなことはしない。逃げる上でしか使わないよ」
「………ずるい」
「念の修行なんだから、俺だって使うよ。こういう使い方もあるんだって見てて」

念は破壊のための力じゃなくて。
俺にとっては修復や回復、もしくは生き延びるための力なんだ。
そういう使い方もできるんだってことを、カルトに知っておいてほしい。

てなわけで、鬼ごっこスタート!

≪瞬きの時間(タイムラグ)≫とか円とか普通に使っちゃうぜ!
だってなんかもう後ろから追ってくるカルトのオーラがヤバイし!!
あの纏のおどろおどろしさはイルミとかキキョウさんそっくりだよ怖い!!!



というわけで、三日間ほど鬼ごっこにいそしんでおりました。
そう、三日目にちょっとした変化があったんだ。





カルトは可愛いけど怖い子だなと思います

[2013年 8月 22日]