第184話
さて皆さん。俺はいまどこにいると思いますか。
グリードアイランド?ふふふふ、だよな、そう思うよな、残念でした!!
俺もう現実世界に帰ってきちゃってるよ!!!
………あ、いや、ヨークシン編に介入しようとかそういうことじゃなくてな?
単純にもう九月に突入してるだけっていうー………。
やめてやめて石投げないで。俺にも心の準備とか疲れを癒す時間とか欲しくて。
くじら島で癒してもらっただろうって?それはそれ、これはこれ。
でも結局ずっと胸がじくじく痛むのなら、やっぱり見届けてきた方がいいんじゃないかなって思って。
チビが毎日心配そうに俺にぴったりくっついてくるしさ。引きこもってばかりもいられないよなって。
もう九月に入ってるから、旅団が地下競売を襲撃する事件は起きた後だと思う。
……ウボォーも、多分、死んでる。クラピカはついに明確な殺意を持って人を手にかけたってことだ。
「おかえりなさいませ、ツェズゲラ様。バッテラ氏がお呼びです」
「あぁ、わかっている」
「そして様」
「……?」
「少々状況が変わりまして。お二人ともこちらへ」
なんでか俺もバッテラに呼ばれているようで、思わずツェズゲラを見上げると視線がばちりと合う。
お互いに顔を見合わせたものの答えなんて出るはずもなく、揃って首を捻りながら歩き出した。
向かった先に待ち構えていたバッテラが告げたのは、やはりオークションが襲撃されたという事実。
狙われたのは地下競売であり、マフィアたちが行う闇のオークションだ。
一般のオークションとは別であるため、出品される予定のグリードアイランドは無事だという。
しかしオークション開催に何らかの影響が出る可能性もある。
そのため今後の動向を注視しているように、というのがバッテラの指示だった。
けど俺は連絡係としての契約だったはずだけど。
疑問に思っていたら、バッテラの方から指示があった。ヨークシンの状況を調べて伝達してほしいと。
もちろん割増で金は払おう、と提示された額はとんでもないものだった。金持ちコワっ!!!
……え、つまりそれさ。ヨークシンを回ってこいってことだよね?
げ、原作絡みの誰かに遭遇しませんように……!!!
なんて思ってた頃が、俺にもありました。
「………パク、いまなんて?」
『甘いものが欲しいわ。ちょっと疲れてるのよ』
恐る恐る電源を入れてみたらメールやら着信履歴やら色々とあって。
やっぱクロロやシャルには不審に思われたかな、と溜め息を吐いていたところに着信。
表示された名前に俺は一瞬硬直した。
『マチもあれで疲れてるだろうから、ふたつね。あ、シズクの分も頼もうかしら』
「……俺、デリバリーじゃないんだが」
『運び屋でしょう?ちゃんと報酬は払うわ。でも、友人のよしみでお願いできると嬉しいわね』
友人、といってくれるパクにものすごく息苦しくなる。
だって俺はそんな風にいってくれるパクの仲間を見殺しにしたのに。
ウボォーが死ぬとわかっていて何も手を打たなかったのに。
携帯から聞こえてくる落ち着いた声が静かなものであればあるほど、辛い。
『待ってるから。よろしく』
パクノダという人物に待ち受ける未来。
それを思うと、俺は繋がってしまったこの会話を、断ることはできなかった。
さすがに天空闘技場までケーキを買いには行けなかったので。
女の子に人気のお店でケーキとプリンを買ってきた。ここのも美味しいよ、それなりに。
色んな種類のものを買ったから目でも楽しめるだろうし。これぐらいで許してもらえるかな?
あー…顔合わせるのめっちゃ気まずい。
パクに確認したらクロロは外出中らしい。うん、ならその隙に渡して帰ろう!
予言うんぬんのこと突っ込まれると困る!!
クロロが俺からの電話のこと団員に伝えてたらアウトだけど!!
でもあんな世迷言を他の人間に打ち明けたりしないよな、多分。
廃墟を進んでいくと、建物の奥に複数の気配を感じる。……多いな。
旅団の連中って常に全員が揃ってるわけじゃなくて、だいたいは三人か四人ぐらいいればいい方。
普段はそれぞれが自分の生活を送ってるらしい。集まるのは基本的に仕事、盗むときってわけだ。
…なのに俺は比較的団員が集まってるときに立ち会うことが多いっていう。
そ、そんなラッキーはいらない。
「パク、届け物」
「あら、ありがとう。早かったのね」
扉なんてない入口をくぐっていくと、パクが振り返った。
相変わらずの豊満な胸と見事な曲線美を持つ肢。本当に眩しいお姿ですね…!!
「?ずっと連絡つかなかったのにどうしたんだよ」
「………シャル」
きょとんと大きな目を瞬いて首を傾げるシャルは、別段怒った様子もない。
「そういえば、予言のことなんだけど」
「………何の話だ」
「またまた。クロロに話しただろ?あれってさ、ノストラードの占い師のこと?」
げ。クロロとの電話内容はシャルに伝わってたのか。…副リーダーみたいなもんだもんな。
でも俺の予言は単純に原作知識を話していただけであって…占いとかじゃ。
って、あれ、もしかしてこれ俺とネオンの繋がりがバレてる!?どどどどどうしよう。
そうなるといずれクラピカと俺の繋がりもわかっちゃうってことなんじゃ…!!
「俺は、占いは好きじゃない」
「うん、すごくらしいお言葉をありがとう。で?何しに来たの。パクに届け物って」
「甘いものを持ってこいって言われた。マチとシズクにも」
「…何頼んでんだよパク」
「ありがとうございます、おいしそう」
シズクはマイペースにプリンを手にとってる。マチも仏頂面ながらも抹茶ケーキをチョイス。
男連中でも食べたいヤツがいれば…と周囲を見回して。
見慣れた顔ふたつと目が合いました。
「「…」」
わーお。
どうしてこんなとこに……っていうか、そうかちょうどこのタイミングだったのか。
旅団につかまったゴンとキルアに見つかっちゃったよ……!!!
かっとばしてしまいました
[2014年 3月 20日]