ってさ、これでやるゲーム知ってる?」

旅団のアジトのひとつに連行されていた俺は、ひらひら振られた棒に目をやる。
俺の世界にもあった、日本ではポピュラーなチョコ菓子。
チョコでコーティングされたクッキー棒は、このシーズンなぜか大安売りされている。
おかげで、最近の俺の非常菓子として大活躍中だ。

「………合コンとかでやるような、あれか?」
「あ、なんだ知ってるんだ」

意外、といわんばかりの顔でシャルが手にしたそれをくわえる。
そりゃな、俺と合コンなんて結びつかないだろうけどな、だからって遠慮なさすぎだろ!
縁がないと思ってんだろ、くっそシャルはいいよな美形だから。
どうせ俺は女の子とポッキーゲームなんてしたこと一度もねえよ…!!
ポッキーなんて、一般の男子学生にとっては口と鼻に突っ込む笑いアイテムだよ!

悲しい気持ちになりながら、俺も分けてもらって一本くわえる。
…そういや、俺の高校時代の友達はやってたな、ポッキーゲーム。
たまたま遭遇して見る羽目になっちゃった衝撃といったらなかった。マジ虚しかった。

「あら、おいしそうなの食べてるわね」
「パクも食べる?まだ残ってるよ」
「いまダイエット中だから遠慮するわ」

コーヒーを手にやってきた美女はそう言ってシャルの誘いを断る。
俺は思わずまじまじとパクの身体を見てしまった。…どこにダイエットの必要が…?
凝視する俺の視線に気づいたらしく、パクが笑いながら首を傾げてきた。
あ、すんません!女性の身体見るとかめっちゃ失礼なことしてた俺!!

「………パク、全然ダイエットの必要ないと思うけど」
「ふふ、ありがとう。そう言ってもらえるのは嬉しいけど、自分としては危ないところなの」
「体調を崩さない程度に」
「ええ、そうしておくわ。甘いものは好きだから、ひと口だけもらおうかしら」

じゃあ袋から一本、と立ち上がろうとした俺の肩にそっとパクの手が触れて。
さらりと髪が俺の頬を撫でた、と思ったときにはぽきりと軽い音。
そして楽しげに笑ったパクの口にはポッキーの半分がくわえられてて。

「ご馳走様」

コーヒーの香りと共に離れていく笑顔に、俺はもうどうしたらいいのやら。
頭が真っ白になって、そのまま元の位置に腰を下ろすしかなかった。

いま、何が起きたんでせう。

平静を装うとして頬杖をつくものの、全然頭が動かない。
もぐもぐと残りを食べて飲み込んだけど、やっぱり何がなんだか。

「………、真顔はやめようよ真顔は」

そうシャルが呆れた顔で言ってたけど。
うううううるさい、俺みたいな一般人にあんな美女の接近は刺激が強すぎるんだよ!

「あれ?いいもの持ってるネ」

聞こえてきた高い声に、俺は反射で残りのポッキーをシャルから奪った。
そんでもって手で握り潰し、やって来た変態に投げつける。
嫌な予感しかしなかったからこその行動だったが、多分俺は間違ってない。

その証拠に、シャルが後ろで拍手してたからな!
あ、けどお菓子に罪はないのに握り潰してごめん!!全部ヒソカのせいってことで!




新婚生活で出せなかったので、今回はパクの登場。

[2011年 11月 11日]