クロロさんの扱いが酷いのは仕様です。
[2011年 11月 11日]
「ってさ、これでやるゲーム知ってる?」
最近が気に入ってるらしいお菓子をひらひら振る。
けっこう金銭感覚に厳しいは、安売りされてる菓子を買う傾向にある。
だからこのシーズンは安くなるポッキーが、もっぱらの携帯食になっているらしいんだけど。
これってさ、なんかよく恋人たちが使ってるよね。あとあわよくば、って狙ってる連中が。
「………合コンとかでやるような、あれか?」
「あ、なんだ知ってるんだ」
そういうことに興味なさそうなのに。
あ、でも全くないわけじゃないし、付き合わされたことでもあるのかな。
進んでやりそうには見えない上、むしろ面倒臭がりそう。
その証拠に、疲れた顔で新しいポッキーをくわえてる。
食べ物にかこつけていちゃつくとか、鬱陶しいことこの上ないよねー。
「あら、おいしそうなの食べてるわね」
「パクも食べる?まだ残ってるよ」
「いまダイエット中だから遠慮するわ」
甘いものは好きだけど、苦いものも好きなパクはコーヒーを手に現れた。
パクもマチもあとシズクも、体重のことになると目の色変えるから怖いよ。
これに関してはクロロでさえ口を出さないもんな。触らぬなんとかに、ってやつ。
ときどき空気読まずにフィンクスとかが地雷踏んでるけど、それは自業自得。
曖昧に聞き流して話題を変えようと思ったんだけど。
は遠慮なくパクの身体を上から下まで観察してる。…勇者だ。
「………パク、全然ダイエットの必要ないと思うけど」
しかも、はっきり本題に触れたときたもんだ。
しっかりと眺めた後で躊躇いなく直球を投げたもんだから、俺はひやっとしたけど。
むしろパクは嬉しそうに笑った。…すごいな、こういうタイミングで言うと嫌味に取られないのか。
「ふふ、ありがとう。そう言ってもらえるのは嬉しいけど、自分としては危ないところなの」
「体調を崩さない程度に」
「ええ、そうしておくわ。甘いものは好きだから、ひと口だけもらおうかしら」
そんでもって無理に止めないのもポイント高い、と。
俺たちにはないスキルだよなー、クロロもああ見えてうっかり地雷踏みかけるし。
今度参考にしよう。一番は、危ない橋は渡らず逃げるってことだけどさ。
上機嫌なパクは、がくわえてたポッキーをぱくりと食べて半分だけ持っていく。
いままさに、俺たちが話してたゲームと同じ状態だ。
「ご馳走様」
応じるように浮かせてた腰を戻して、は去ってくパクを無言で見送る。
いつも通りの淡々とした横顔で頬杖をつく姿に、俺は感心するやら呆れるやら。
他の連中がいまの光景見たら、多分顎が外れるよ?
パクがあんなことするの珍しいし、それを平然と受け入れるも普通じゃないし。
ある意味で色っぽい光景なのに、全然そういう雰囲気に感じられないのは。
「………、真顔はやめようよ真顔は」
そう、の表情が変わらな過ぎるから。
意識してなくてこれって、本当に厄介だよね。
俺の意見にが眉を寄せたと思ったら。
「あれ?いいもの持ってるネ」
聞こえてきたキモチワルイ声に、俺の手の中からポッキーの袋が消えた。
あれ?と思ったときにはの手がその袋を中身ごと握り潰してて。
そしてそれをやって来たヒソカに投げつけてた。
おー、すごい早業。
思わず拍手してると、ヒソカの後ろからクロロが顔を出した。
ポッキーの存在に目を輝かせてたんだけど。
ごめん、いま投げつけたやつで最後なんだと空の箱を振る。
若干涙目になってる団長に、俺は噴き出しそうになるのをこらえるのが大変だった。
ってヒソカ、気持ち悪いからその笑い止めてくんない。
クロロさんの扱いが酷いのは仕様です。
[2011年 11月 11日]