シャルナーク視点

ってさ、これでやるゲーム知ってる?」

最近が気に入ってるらしいお菓子をひらひら振る。
けっこう金銭感覚に厳しいは、安売りされてる菓子を買う傾向にある。
だからこのシーズンは安くなるポッキーが、もっぱらの携帯食になっているらしいんだけど。
これってさ、なんかよく恋人たちが使ってるよね。あとあわよくば、って狙ってる連中が。

「………合コンとかでやるような、あれか?」
「あ、なんだ知ってるんだ」

そういうことに興味なさそうなのに。
あ、でも全くないわけじゃないし、付き合わされたことでもあるのかな。
進んでやりそうには見えない上、むしろ面倒臭がりそう。

その証拠に、疲れた顔で新しいポッキーをくわえてる。
食べ物にかこつけていちゃつくとか、鬱陶しいことこの上ないよねー。

「あら、おいしそうなの食べてるわね」
「パクも食べる?まだ残ってるよ」
「いまダイエット中だから遠慮するわ」

甘いものは好きだけど、苦いものも好きなパクはコーヒーを手に現れた。
パクもマチもあとシズクも、体重のことになると目の色変えるから怖いよ。
これに関してはクロロでさえ口を出さないもんな。触らぬなんとかに、ってやつ。
ときどき空気読まずにフィンクスとかが地雷踏んでるけど、それは自業自得。

曖昧に聞き流して話題を変えようと思ったんだけど。
は遠慮なくパクの身体を上から下まで観察してる。…勇者だ。

「………パク、全然ダイエットの必要ないと思うけど」

しかも、はっきり本題に触れたときたもんだ。
しっかりと眺めた後で躊躇いなく直球を投げたもんだから、俺はひやっとしたけど。
むしろパクは嬉しそうに笑った。…すごいな、こういうタイミングで言うと嫌味に取られないのか。

「ふふ、ありがとう。そう言ってもらえるのは嬉しいけど、自分としては危ないところなの」
「体調を崩さない程度に」
「ええ、そうしておくわ。甘いものは好きだから、ひと口だけもらおうかしら」

そんでもって無理に止めないのもポイント高い、と。
俺たちにはないスキルだよなー、クロロもああ見えてうっかり地雷踏みかけるし。
今度参考にしよう。一番は、危ない橋は渡らず逃げるってことだけどさ。

上機嫌なパクは、がくわえてたポッキーをぱくりと食べて半分だけ持っていく。
いままさに、俺たちが話してたゲームと同じ状態だ。

「ご馳走様」

応じるように浮かせてた腰を戻して、は去ってくパクを無言で見送る。
いつも通りの淡々とした横顔で頬杖をつく姿に、俺は感心するやら呆れるやら。
他の連中がいまの光景見たら、多分顎が外れるよ?
パクがあんなことするの珍しいし、それを平然と受け入れるも普通じゃないし。
ある意味で色っぽい光景なのに、全然そういう雰囲気に感じられないのは。

「………、真顔はやめようよ真顔は」

そう、の表情が変わらな過ぎるから。
意識してなくてこれって、本当に厄介だよね。

俺の意見にが眉を寄せたと思ったら。

「あれ?いいもの持ってるネ」

聞こえてきたキモチワルイ声に、俺の手の中からポッキーの袋が消えた。
あれ?と思ったときにはの手がその袋を中身ごと握り潰してて。
そしてそれをやって来たヒソカに投げつけてた。

おー、すごい早業。
思わず拍手してると、ヒソカの後ろからクロロが顔を出した。

ポッキーの存在に目を輝かせてたんだけど。
ごめん、いま投げつけたやつで最後なんだと空の箱を振る。
若干涙目になってる団長に、俺は噴き出しそうになるのをこらえるのが大変だった。

ってヒソカ、気持ち悪いからその笑い止めてくんない。





クロロさんの扱いが酷いのは仕様です。

[2011年 11月 11日]